★★★☆☆
~極悪な予告編~
2015/07/11(字) 市川東宝で鑑賞。
シュワルツェネッガー主演のシリーズ第5作目。5作目だが、軽んじられている3・4を飛び越して1・2の直系と謳われている。
確かに3・4はいまいちピンと来ない出来だったと思う。
3は最新最強の敵ターミネーターの凄みが2よりも低下した印象。女性型、しかも妙齢の女性というのが威圧感を下げていたと思う。主人公も頼り無い感じで、2の時に得た覚悟はどこに行ったんだと憤懣やるかたない。
4は審判の日以降の未来戦闘を舞台にしているため、これまでのシリーズとあまりに毛色が異なっており、単体としては楽しめたがシリーズとして見ると中途半端な印象。
そして4。正直あまり興味を引かれていなかったが1・2の監督でありシリーズの産みの親であるジェームズ・キャメロン監督が絶賛した記事を読んで視聴意欲をかき立てられた。この記事までは良心的で、映画のネタばらしは「後半の展開が凄い」にとどめられていた。(これでも結構なネタばらしだけど)
実際この時期に映画館で流されていた予告編は大がかりなアクションシーンをメインにし、物語自体にはあまり触れていなかった。しかしそのアクションシーン自体大規模で大予算がかかっていそうだと感じるもののイメージの新規性には乏しかったため、良くあるアクション映画の一本というイメージだった。
おそらく物語の核心を秘匿し鑑賞体験を守るためにこのようになっていたのだろうが、前評判の弱さに危機感を感じたのだろう。(勝手なイメージ的には数字にビビった上長が良識ある部下のとめるのを聞かず、全力ネタばらしバージョン作成を指示したに違いない。)
上映直前の予告編は、もう恐ろしいほどのネタバレ。キャメロン監督の語った後半の展開もほぼ全て示唆される内容となっており、予告編で想像した物語が丁寧に描かれるのを見るだけの本編鑑賞なのである。
それでも、実際に見るまではそれ以上の驚きの展開があると思うわけで、まさかそれが全てだとは思いもよらず、最後まで信じて裏切られた印象。
もう、見ていて、あれ? あれ? の連続。
物語のキーポイント以外にもピンチの切り抜け方や見所となるアクション全てをご丁寧にも予告編につぎ込んでいる。バスに乗った瞬間、そのバスがどうなるか分かってしまう。
本当に、酷い予告編だと思う。
見てもらえなくちゃ仕方が無いというのも分かるが、優秀な予告編の提議は以下のようなものだと思う。
・本編より面白そう
ともかく興味を引く内容にまとまっている。
・使うカットは遠慮しない
そのために使用カットはクライマックスだろうがなんだろうが遠慮しない。
見所全てを使ってもいい。
・想起される物語は本編とは異なる
ただし、予告編は「ミスリード」でなくてはならない。
本編の展開を正確に見せるのではなく、モンタージュをずらして異なる展開を想像させるべき。
本編の核心に近いネタバレは御法度。
今作の予告編はこのあたりのことがまるで分かっていない。
見所を順に並べ、あらすじを述べる内容となっており、才能を感じさせない悪辣で凡庸な編集。
まったく、このような配給会社にあたった作品は貧乏くじだ。どれだけ本編が面白かったとしても、前宣伝でミステリーの犯人を示されてはやりようが無い。「映画を映画館で見る」という文化に敬意を払わない人間は映画に関係する仕事には就いて欲しくないものだ。
予告編の方が面白い予告編詐欺には何度も合ってきたが、予告編を編集した職人芸に感心出来るのでまだ許容できた。
作品自体の内容は、1・2を視聴した上に余分な前情報の無い事が前提となっているのでファン限定色の強いものだが、その分1・2が好きな人にはこれこれ! という喜びがある。特にシュワルツェネッガーが妙な若返り処理ではなく、今の風体で主演していることが最高に楽しい。「生体組織は年をとる」というアイデア一つが生み出すこの気持ちよい開放感。あの年老いたターミネーターの笑顔はCGではまだまだ到達し得ない領域で、辿り着いても費用対効果から実写でとった方が良いと判断される物だろう。
新三部作の1作目という事でまだ謎が残ったまま幕を閉じる。
願わくは次作の予告編は良識あるものにして欲しい。本当に、本編以外の雑音は万死に値する。
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