2015年11月24日火曜日

タイム

TIME/タイム [Blu-ray]

★★☆☆☆
~物語が遠い~

遺伝情報至上主義社会の静かな反乱を描いた「ガタカ」。
人工のデジタル女優に振り回される映画監督の物語、「シモーヌ」。
魅力的な作品を出し続けるアンドリュー・ニコル監督の作品なので期待大きく視聴したが、肩すかしな印象となった。

全ての人間の腕には、死に至るまでの「残り時間」が表示され、労働することによってそれを延長する世界。金銭が時間に置き換えられ、バスに乗るのにもコーヒーを飲むのにも自分の残り時間を消費する。莫大な時間を持つ富裕層は隔離された都市で自由に暮らし、貧困層はその日を生きる労働に終始する。
現実でも、人間は人生の持ち時間を労働によって金銭に変えて生活している。自分の持ち時間を金銭と同一にするという設定により、実際に存在しているが意識に上りにくい人生の時間、つまりは命を可視化するという大仕掛け。

おもしろいのは個人の時間は互いに委譲可能ということ。お金でもあるのだから当然だがこれがドラマを生み、同時に世界観の構築を難しくしてしまっている。
貧困層に属する主人公は工場でその日生きる時間稼ぎに精一杯。ある日突然時間の大富豪となった主人公は、富裕層の住む都市を訪れ、この世の仕組みと理不尽を目の当たりにし、一人の女性と出会う。
設定にときめくし実際そつなく描かれていく物語は最後まで予断を許さない。残念なのはこれが現実感をもったSFではなく、おとぎ話に感じられることだ。
大仕掛けな分、つじつまの合わない所が随所に溢れ、それが目に付く。整った画面で淡々と描かれているため、勢いでごまかされることなく違和感が降り積もっていくのだ。どのような雰囲気かというと、「シモーヌ」を見た人ならば、その劇中で上映された映画を2時間枠にした物というのがどんぴしゃり。耽美で象徴的。悪くいえば障子越しに見た景色のようなあやふやさ。

大仕掛けな設定と表現手法が食い違っている印象。同じような要素を持つ「ガタカ」は設定の不確かさが浮かび上がることなく視聴できた。舞台を広げすぎずこぢんまりと納めていたことが有利に働いたのだと思う。
どこまで話を広げるのかを見極めるのは実に難しい事なのだろう。

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