~ニコラス魔界大冒険~
★★☆☆☆
ニコラス・ケイジ主演の現代魔法大戦。
ディズニー初期のアニメーション映画、ファンタジアは複数の短編からなっているが、そのうちの一編が「魔法使いの弟子」。魔法使いは髭のおじいさん、魔法使いの弟子がミッキーとなっている。ニコラス・ケイジが髭のおじいさん役というわけだ。
物語は師匠と弟子の恋愛模様を織り交ぜて展開する分かりやすい内容。さえない若者が特別な力を得て……、という定番な内容だが、特筆すべきは主人公の若者が、心底さえないという事。
普通は役としてもてない設定になっていても、主演を張るような俳優。基本的にイケメンである。美形なのにモテない、というのはなかば黙認のルールみたいなものだ。だが、今作は異なる。主演のジェイ・バルチェルは本当にもてなさそうなのだ。演技だけでは出てこない、素のイケてなさ。なにせ、特別な力を得た後でも格好良くないのだから本物だ。
しかし替わりに、非常な親近感を覚えるのも事実。物語の最後まで距離を感じることなく終劇を迎える。これはおそらく意図された物なのだ。
なにしろ、彼はミッキーマウスのよりしろなのだから。
ミッキーマウスは、おっちょこちょいで、いい具合にいい加減で、すごい力を持つということはない。そして、あふれる親近感。
その枠に制限されて、今作の主人公は最後まで間抜けなままなのだ。
そんなことで話がまとまるのか? まとまる。
ヒロインは、大活躍をした主人公に惚れるのではない。非常に見る目のある(ひょっとしたら下手物ぐいの)ヒロインは、一見からは分からない、内面の優しさ、誠実さによって、主人公に好意を寄せるのだ。主人公が立派になりすぎることなく、ヒロインの立派さによって結ばれる。
ああ、これはドラえもんではないか。
今作のプロデューサーは大作をそつなくまとめて時代にあった娯楽を提供するのに定評のブラッカイマー。たしかに全編に、ブラッカイマー節がにじみ出ている。
冒頭の一気呵成な説明シーケンスがすごい。
細かいことを気にせずに堂々と前置きを説明してしまう度胸。
序盤から出し惜しみないスペクタクルシーン。
そして期待をあおり、これはひょっとして名作か! と思わせて中盤以降下がりっぱなしのテンション。
ネタ的にはたっぷり時間をとれそうなシチュエーションをゴミのように扱ってでも前進していく潔さ。
ブラッカイマーはこうでなければね。というか、こういう映画を作る人がいなくては、業界が弱っていくと思う。時代に残るとかは気にせず、今売れるのかどうなのかという、これはこれでまっとうな視点。
見所多く、値段分楽しめるという点で、今作もきちんと価値ある「商品」で、何も考えず楽しむことが出来た。
ところでジェイ・バルチェルは、ほぼ同時期に公開されたCGアニメ映画「ヒックとドラゴン」で主人公の声優をこなしている。この主人公がまた今作に負けていないへたれ具合。へたれ役としての立ち位置を固めている。
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