~何の不満もない傑作~
★★★★☆
映画館で3D鑑賞。
人間には内緒で動き回るおもちゃ達の冒険。
CGアニメの黎明期を一作目で切り裂いたシリーズの三作目。長足の進歩に驚きを隠し得ない。
練り上げられたストーリーは、まるでそこしかない細い穴を通すように繊細に紡ぎあげられており、見事に感情を操作される。とぎれない見所。全体の密度も過不足無く整えられ、鑑賞中に我に戻る機会が無く、没頭して楽しむことが出来る。
敵味方、どんなキャラクターにも愛すべき点があり、それぞれの存在感に奥行きを感じる。自分は1、2をきちんと通して鑑賞したことのない曖昧な印象で3を見たが、序盤で綺麗にキャラクターを理解できるし、不都合は全く感じなかった。
が、この物語をリアルタイムに楽しんでいた世代には、特別にすばらしい作品となるらしい。
登場するおもちゃ達には持ち主がいる。
一作目では小学生だった彼は、作を追うごとに、実時間に即して大人に近づいていく。今作ではついに大学入学の年齢となり、おもちゃ達の扱いをどうするのか、愛情が深いほど苦しい状況を突きつけられる。この苦しさは、おもちゃを愛する持ち主にとっても、持ち主を愛するおもちゃにとっても同じものだ。
持っているおもちゃが動いたら楽しいだろう、という子供の夢をそのままスクリーンでかなえてくれた一作目から、おもちゃの持ち主と近い年齢で楽しむことの出来た多くの人にとって、作品中のおもちゃ達は誰でもない自分のおもちゃに等しい。今作が描くおもちゃ達との決別は、まさに自分の問題だ。
ひときわ強い感情移入をもって今作を鑑賞し、たどり着いた結末にどんなに涙しても、それは恥ずかしいことではない。また、その涙は後ろ向きの回顧的な涙ではなく、これからの人生を凛と生きていく力になる、心強い涙であろう。
最後に、ピクサーのCGアニメに特徴的な徹底したローカライズによるものだと思うが、日本人にとってもはや最大公約数的なあのキャラクターが画面に登場する。このような点も物語を身近に感じさせる一つのテクニックなのだろう。
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