★★★☆☆
~冒頭必見~
2017年フランス映画。ただし言語は英語。
原作はフランスのビジュアルコミック、いわゆるバンド・デシネ「ヴァレリアン」。
1967年から刊行。全23巻というからかなりの古典と言っていい。この作品自体数多くのSF作品に影響を与えた名作の模様。
監督は『レオン』『フィフス・エレメント』のリュック・ベッソン監督。
監督作品はは大まかに分けてレオンのような、はぐれ者を中心とした現代ガンアクションと、雑多なSF映画の二系統に別れる。(『LUCY/ルーシー』は中間)
今作はSF映画の方で、どうもこちらの路線では苦戦している印象。決して売れないわけでは無いが、SF以外の作品の方が評価が高いようである。
リュック・ベッソン監督とは知らずに視聴開始したが、冒頭数分でこれはただ者ではないと慌てることになった。
―――――――――――――――――――このシークエンスがデビッド・ボウイの「Space Oddity」をバックに展開されるのだが、歌詞や曲調と相まって、「無数の異星人がともに暮らす都市国家衛星」を中心とした世界観に引き込まれる。
衛星軌道上で様々な実験を行っている国際宇宙ステーション。そこを訪れる人、迎える人の姿が次々映し出されていく。
敵国だった人が訪れ、様々な国の人種の人が訪れ、そこは人々が出自から解放されてともに暮らす場所である。
ステーション自体も拡張を重ねて大きくなり、時代は流れ、とうとう異星人も訪れる。機械のような異星人。獣のような異星人。それさえも全て受け入れ、宇宙ステーションは小さな惑星のような規模まで膨れあがった。
衛星としての質量過多で地球に影響を与えるほどになってしまった宇宙ステーション「アルファ」は、地球を離れて旅を続けることとなった――。
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この部分の傑作感はすさまじく、居住まいを正してみなければと思ったが、次のシーケンスがいきなりブレーキをかけてくる。
―――――――――――――――――――ん? この人達誰? ひょっとしてこの人達が主人公なの?
手足の長い剃髪(?)の青い肌を持つ種族の朝の風景が描かれる。体表はまるでタコやイカのようにきらめきながら色を変えていく幻想的な種族。
美しい砂浜に村を構え、不思議な真珠を海からすくい上げている。そこには暮らしがあり、若者同士の恋心も見え隠れする。
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前情報一切無しで見たための勘違いなのだが、膨らんだ期待を一気にしぼませる展開だった。すごく不安。
―――――――――――――――――――ここでようやく主人公の登場。
突如として青い空に突如巨大な爆発と黒煙。
惑星上空で宇宙戦艦同士の戦闘が発生しており、その余波が惑星上まで及んでいた。やがて巨大戦艦が墜落し、地表に衝突。
安全な場所に逃げ込んだ一部を除いて惑星自体が破壊されてしまう――。
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―――――――――――――――――――冒頭の昂揚が薄れ、フラットになった気分で再スタート。
アルファの連邦捜査官であるヴァレリアンとその同僚ローレリーヌ。
ヴァレリアンは美しいローレリーヌを口説こうと躍起になっているが、女たらしのヴァレリアンにローレリーヌは一線を引いたまま。
そんな二人にアルファから盗まれた「コンバーター」を取り戻せという指令が舞い込む――。
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以降コンバーター奪取作戦が展開され、アルファに帰還。そこで新たな問題に対処と物語はめまぐるしく展開していく。
物語の密度は非常に高く、中盤でかなりの満足感を得た。
折々に展開されるSF設定に基づくビジュアルもなかなか魅力的。
特に「異なる次元」に存在する巨大商業都市。そこに表の次元、裏の次元から同時に潜入作戦を行うシーンはややこしいが新鮮。
誰にでも化けれる「バブル」のショーシーンも楽しい。
ビジュアルと展開の勢いにあっという間の137分だったが、話としてはかなり粗っぽい。
ただ、時折感じる綿密な世界設定が雑な部分を許容させてくれる。物語として、何か裏の都合があるのだろう、と勝手に思えてしまうのだ。
この感触はスターウォーズに近いような気がする。
ビジュアルに翻弄されるのが気持ち良い、あまり考えずに楽しめる一作。
ヴァレリアンは日本のアニメ会社と共同でアニメも作成されている模様だが、日本ではほとんど情報がない。バンド・デシネも映画に関連あるエピソードが和訳されているのみ。
エージェント二人の活躍を、もっとたのしみたい。
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