2020年10月16日金曜日

ケープ・フィアー

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☆☆☆☆
~ロバート・デ・ニーロ48才の肉体美~


 1991年アメリカ。ロバート・デ・ニーロ主演のマッチョおっさんの嫌がらせ復讐劇。
 1962年の「恐怖の岬」のリメイクということで、オリジナルの役者が何名もカメオ出演。犯罪者が警察官になったり、なかなかしゃれた配役となっておるらしい。
 

 マックス・ケイディは16才の少女に対する暴行障害による14年の服役を終えて出所。刑務所での日々は非常に辛いものであり、それに耐えるために文盲を覆して読書家になり、体を鍛えて筋骨隆々になっていた。
 マックスは当時の担当弁護人サム・ボーデンが弁護業務に手を抜いたために長期服役になったと思い込んでおり、14年の間に復讐の念が凝り固まった危険な人間としてサムの前に現れた。
 犯罪すれすれ、もしくは露見しない犯罪による嫌がらせをくり返して、サムに迫っていく。やがてサムの娘の存在を知ったマックスは演劇授業の講師を偽って娘に近づき、15才の少女の好奇心につけ込んでその心の中にまで忍び寄っていた――。

 ぎっちり張り詰めた全身の筋肉。体中に彫り込んだまがまがしい入れ墨。当時48才のロバート・デ・ニーロが演じるマックスの必要に応じて知性と粗野を切り替える犯罪者の存在感がすごい。こんなのが側に現れたら百戦錬磨の弁護士も狂気に染まっていくだろう。さすがだなと見ほれてしまう演技。
 
 しかし、作品全体としてみると感情移入できる登場人物が誰もいないのが辛い。弁護士サムはマックスに恨まれても仕様がないような状況だし、インテリらしい他力本願の卑怯な手段ばかり使ってとても応援できない。娘はこまっしゃくれた生意気さで、うかうかと危険に入り込んでは無自覚に周囲を危険におとしめていく。えらい目に遭うと嬉しくなるほどのヘイト稼ぎキャラ。他に弁護士仲間や警官、私立探偵まで出てくるが、応援したくなる人物は居ない。彼らに比べれば適役であるマックスの方がまだ応援できる。
 サムの妻リーが娘を想う気持ちからけなげに体を張るシーンがあり、そこだけがまともな人間に感じた。
 誰にも肩入れできない映画という物は、本当に視聴者が孤立して寂しくなる。どんなに名演技をされてもこれでは楽しむことは出来ない。
 
 マーティン・スコセッシ監督による演出もどうもいまひとつ。高速ズームインによるカッティングが多用されているが、まあ、今見るとコメディっぽく感じてしまう。最近インドドラマのズームインをくり返すこてこての演出(「インドドラマ くどい演出」とかで検索すると引っかかるよ)が一部で話題になっているが、その源流はここなのではないかと思うほど多様されている。
 
 知的な犯罪者が弁護士を合法的に追い込んでいく様が見事だったので、暴力路線に切り替えずにそのまま復讐完遂して欲しかった――。
 

 

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