2019年11月6日水曜日

96時間

 96時間 [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

★★★☆☆
~金科玉条を得た獣~

 2008年のフランス映画。脚本にリュック・ベッソンが名前を連ねている。
 

 元CIA工作員のブライアンは離婚して別居している一人娘キムの良い父であろうと奮戦しているが、危険に合わないようにと様々な制限を言いつけては敬遠される事をくり返していた。ティーンエイジャーのキムはそんな親心を知らず、友人アマンダとパリ旅行を企画。ブライアンは渋々これを了解して送り出すが、二人は脇の甘さからパリに着いたとたん襲撃を受け、外国人を誘拐し売春強要する組織に囚われてしまう。
 接続したままだった携帯電話で一部始終を聞いていたブライアンは元同僚と共に犯人の当たりをつけ、単身パリへ向かった。誘拐事件被害者の生存可能性が高いといわれる制限時間は――96時間。

 時間制限があるため、正当な手順を踏んでいては間に合わない! 自分で娘を救うしかない! という前提がドカンと爆誕し、ブライアン個人VS犯罪組織の図式が形成。娘の命のためなら法を犯そうが無視という姿勢は、刑事(刑事じゃないけど)物にありがちな法遵守の縛りから解き放たれた猛獣というおもむきで非常に爽快。各所で事件を起こすことになるので警察にマークされていくが、一般市民にはそれほど迷惑をかけていないので嫌悪感もない。

 娘を救うために! ともかくこの単純きわまりない目的が非常に強く、分かりやすい。狂ったようなブライアンの猛進もやり過ぎに思えるような容赦無さも全て納得させてしまう。普通なら御都合主義に過ぎて冷めそうなピンチからの脱出シーンも、娘の無事に直結するため「良かった!」と嬉しくなってしまうのである。まるで水戸黄門の印籠のような力で映画全体が一つの力にまとめられている。

 娘の身柄は追っても追っても次の場所が示される逃げ水のような展開。様々なシチュエーションでブライアンの活躍を見る事ができる。その無双ぶりは、事件前にキムの義理の父(元妻の再婚相手)の裕福さに惨めな思いをするブライアンが描かれていることでさらに爽快感が増している。こういった物語全体としてのタメは非常に重要だと感じる。

 続編が二作あるようだが、本作の「娘のために」といった中心軸がきちんと用意出来るかどうかが重要だと思う。また娘が誘拐されるわけにも行かないし、どういった手立てがあるだろうと想像するのも楽しい。機会があればこれらも見てみたい。


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