★★★★☆
~新種のゾンビ映画~
2015年の米映画。アクションスリラーになるのかな?
アメリカで事業に失敗したジャックは高額な給金に惹かれて海外で水道事業に関わる会社に入社。妻と二人の幼い娘を連れて東南アジアに赴任することとなった。心機一転と張り切っていたジャックだが、何の手違いか空港に迎えも来ていない。困っている家族に声をかけてくれたのはいかにも旅慣れた英国人ハモンド。友人とともにホテルについたまでは良かったが、先行き不安な展開に妻のアニーは後悔を隠せない。ジャックはただ謝るしかなかった。
翌日新聞を求めて町に出たジャックだったが、様子が何かおかしい。ホテルに帰ってみると、暴徒が押し寄せて宿泊客を襲撃、殺戮している。実は昨日のうちにこの国ではクーデターが起こり、倒された国のトップと結びついて利権をむさぼっていた外国企業に関わる外国人――判別できないので結局は外国人全ては誅戮の対象となっていたのだ。
妻と子供を守るため、ジャックは命をかけて奔走するが――。
クーデターで一夜にして天地がひっくり返るその瞬間に折り悪く居合わせた普通の家族。天下のアメリカをはじめ先進諸外国が黙っていないだろうから、この状況も急速に静まっていくだろうが、それは外から見たスピード感。その場にいる者たちにとっては絶望的な一定期間がそこに現れるのである。しかも外国人は全てホテルに集まっているような発展途上国。押し寄せてきた暴徒と軍隊を防ぎようもなく、ほとんど全滅。
家族以外の人間は、ほぼ全て敵。
この設定、一時期爆発的に量産されたゾンビ映画と同じシチュエーションをゾンビ以外で生み出すことに成功していると言える。
物語はジャック一家が次々と危険な目にあっていくことで進んで行く。幼い子供を助けるために、幼い子供自身の忍耐をきちんと要求したり、手助けしてくれる人が現れても永続しなかったり、逃亡劇としてもこれまでなかった切り口の数々を見せてくれる。自分達の肌を隠し、暴徒の只中を進んで行くシーンはゾンビ映画にはない今作ならではの緊迫したシチュエーションだ。
ラストの急転直下な展開はヒッチコックの名作「北北西に進路をとれ」の最後を彷彿とさせる気持ちよさ。
外国企業に食い物にされる発展途上国といった重めの題材が気になる人は、新種のゾンビ映画だと思って見るとややこしい事情を気にせずに気楽に鑑賞できるかも知れない。
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