★★★☆☆
~溜めと抜き、「恐怖」のカクテル~
2017年イギリスのパニックスリラー。
美人姉妹のリサとケイトはメキシコの観光地でバカンス中、知り合った現地青年に「ケージ・ダイビング」をすすめられる。ホオジロザメを魚の血でおびき寄せ、それを鉄柵の中に入ったまま海中で鑑賞するというスリリングなアトラクションだった。恋人から「退屈な女」と言われ捨てられたばかりのリサはケイトの積極的な誘いもあって二人でチャレンジすることになる。
初めは問題なく間近で見るサメのスリルを楽しんだ二人だったが、ケージをつるす引き上げ機ごと船からもげ落ちてしまいそのまま海中に沈むことになる。海底に叩きつけられたショックで出入り口は開かなくなり、ケージ回りの照明こそ生き残っているもののボンベの酸素は有限、海上との無線通話も深度がありすぎて届かない。しかも海上までには多くのサメが待ち構えている。
震度計が示すその場所は、海底47メートル――。
まずは題名で微妙な印象を受けざるを得ない。海底47メートル。深いのか、浅いのか。素潜りの世界記録は122mらしいので、何とかなるようなならないような……。この微妙な設定が今作の恐怖を生む基盤になっているのだが、題名としてみるとなかなか引きが弱い。逆にそれがなんだろうという興味を引くのかもしれない。
美人姉妹とサメと来れば、結末はともかくお色気満載だろうと見始めてみると、お気楽なバカンス気分は序盤のプール映像くらいでその後はほとんど水中マスクをかぶっている。顔全体を覆うガラスの広いタイプなので表情も見やすいが、お色気にはほど遠い。また、思いのほか恐い。サメによるパニックというよりも海底の孤立感の方が恐怖の主体となっていた。
47メートルも一気に潜って普通に活動するなんて可能なのだろうか、とか、ボンベの酸素よりも普通の水着しか着ていない二人にとって低体温の方が問題になるのではないだろうか、など疑問は浮かぶが海底の密室劇としてそのシチュエーション特有の問題が次々発生するので設定としてすぐれていると思う。
海底に落ちてからは姉妹二人しか登場せず、どちらか一方の酸素が足りなくなったり、一人だけで救援を求めにいったり、二人しかいないのにそれも分断される展開。心細さがさらに増幅される。酸素欠乏による真綿で首を絞めるような緩やかな絶望と、突然襲いかかるサメの一気に立ち上がる恐怖。決定的シーンのための前振りを引っ張って引っ張ってからの……ドーン! おきまりといえばそれまでだが、限られた材料を上手く組み合わせて緩急良く配置。まるで恐怖を上手く混ぜ合わせたカクテルのようで飽きさせない。特に引っ張りと決定的瞬間の時間比率は差が大きく、分かりやすくいうとサメは一瞬しか出てこない。予算の都合なのかもしれないが、スリラーとして実に効果的。
ラスト回りの展開については最後までサービス満点だなという感想。気が利いているともとれるし、そうしなくても、とも思う。突然怒濤の展開となるので結末がちょっと分かりにくくなっているが、普通に演出などから内容を追うなら、二人無事には戻れなかった辛い展開の方が本筋なのは疑いようがない。
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