★★☆☆☆
~ドヤ顔地獄のアクションコメディ?~
2012年の米映画。
大雑把で時代遅れながら実戦では圧倒的な力を発揮する歴戦の猛者。スタローンを当て書きしたようなぴったり具合に、これは「ロッキー」や「エクスペンダブルズ」のような「スタローンの、スタローンによる、スタローンのための」映画なのかと思いきや、「レッド・ブル」「48時間」のウォルター・ヒル監督によるフランス漫画原作の作品だった。
暗殺を生業とするジミー(シルベスター・スタローン)はいつものように相棒ルイスと仕事を行うが、その帰路に何者かに襲われルイスは刺殺。復讐を誓うジミーの前に現れたのがスマホでの情報収集を得意とするテイラー。彼はとある事件を追って遠方からこの地に派遣されており、現地警察とは独立して捜査を行っていた。
テイラーの情報が必要なジミー。現地ガイドと実戦担当が必要なテイラー。お互いが超法規的(法規無視的?)に手を組んで事件の真相を追うことになった――。
狙った味なのだろうが2012年とは思えない懐かしい感じの演出、展開、大味さ。こういうのも悪くないわあ……と開放感を感じる内容。
殺し屋ジミーの後先考え無さがもはや意表を突かれるレベルで、一周回って新しい。コンビ組んだ刑事の前で何の遠慮もなくバンバカ容疑者を銃殺していくんだからすごい。撃ち合いの末とかでなく、拉致して絞り上げて銃殺とかも平気でやる。ウイスキーかっくらった後で運転も当たり前。こういう行為さえ最近の売れ筋映画ではとんと見かけなくなっている事に改めで気づかされた。やらかした後は、あれ、それ上手く言えてる? というようなよく分からん言い回しのキメ台詞(?)でにやりドヤ顔。たまらんといえばたまらん。
刑事テイラーは筋骨隆々なのに特に大きな見せ場無くジミーの影を踏んで歩くだけの陰キャ状態。暗殺者と刑事のコンビというより暗殺者に引きずり回される役割でそもそも得意の情報収集も、警察のオペレーターに「おしえてグーグル先生!」みたく質問投げて聞くだけ。ただの伝言ゲームの中間役なのにドヤ顔で威張っているのだからちゃんちゃらおかしい。しかも敵方に情報をどんどん流してしまう能無し具合。結局最後まであまり役に立たず、何人か撃ち殺したかな? 程度。そのくせジミーの娘に手を出して最後にはわざわざジミーに「とても深い関係になった」とか出来てます宣言。ここで容赦なく撃ち殺されていれば作品として1本筋が通ったかもしれないが、ジミーはまたよう分からん台詞でドヤ顔のエンディング。たまらん。
見せ場として印象的なのは他で見たことがない「斧vs斧」の戦闘。パワー炸裂で一撃必殺感がとても強く、緊張感のある戦闘を楽しむことが出来る。
他にはスタローンの何気ない仕草。カウンターで酒飲んでキョロキョロするだけのシーンがすでに魅力的でスターのオーラを感じさせる。
この作品は同監督の「48時間」的なコメディだったのかもしれない。だが、う~ん、それには主演二人にコメディっぽさが無さ過ぎるよね。いや、スタローンには根底で何をやったも面白みがあるのでひょっとして向いているのかもしれないが、ロッキーやランボーでカッコイイ姿から入ってしまった自分などには笑うのがはばかられてしまって……。自分の敬愛する田中邦衛を連想してしまうからかも。
――いや、読んでる人いるのかというこのブログの状況をバリヤーに書いてしまうと、スタローンは昔からどんな役をしても障害者っぽい。実際「言語障害」と「顔面麻痺」の障害持ちということだがそれだけではない、動きや行動判断(役柄)含めて、そういった雰囲気、オーラが出ている。だからこそ下克上的な物語の爽快感が他の役者よりも格段に強いのではないかと思うが、同時に、「笑ったら駄目!」という縛りが自分の中でオートマチックに発動されてしまっている。強固に積算されてきたモラルが、スタローンのコメディーを阻んで、だけとコミカルなのでお腹がこそばいというか苦しいというか、独特の反応が彼の作品では立ち上がってくるのだ……。そんな風に感じている人、他にもいるのではないかなあ……。
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