★★★★☆
~伏線が編み上げる物語~
2012年の邦画。監督は「アフタースクール」で映像の叙述トリックを見事に決めた内田けんじ。
完全無欠の暗殺者コンドウ(香川照之)とひょんな事から立場が入れ替わってしまった売れない役者桜井(堺雅人)。
記憶を失い貧乏生活で己を探すコンドウ。お金を手にしたが暗殺者としての役割を強要される桜井。
これに、結婚することを周囲に宣言してから婚活に突入する脅威の計画魔キャリアウーマン水嶋(広末涼子)がからんできて――。
もうこの設定と役者陣だけで面白そう感がすごい。
さらに映画を観ていて「脚本がすごいなあ」と思う事はほぼ無いが、この作品ではそれがひしひしと感じられた。情報の出し方とその分量が非常に的確なのである。監督脚本が共に内田氏なので、脚本と演出が一直線に繋がっていることもそう感じさせる理由だろう。
画面の端で写っている物や行動が、絶妙な違和感で記憶に残り、それがテンポ良くこまかく回収される。伏線というには物語に絡まないような情報が蜘蛛の巣のように張り巡らされ、登場人物の人柄、これまでの人生が手触りのように伝わってくるのだ。
小さな伏線が寄り集まり、大きな伏線となって物語に驚きと発見を絶えず注ぎ込んでいく。そうこうしているうちにきれいなエンディングに至り、本当に気持ち良く手のひらで転がしてくれる。
欠陥なのか優位点なのか分からない特徴を持つ特徴的な人物達が、己に誠実に動き回った結果巻き起こった騒動。主要キャラも脇役も、全員が丁寧に描かれ、愛すべき存在となっている。
面白い映画を観たなあという清々しい達成感。幸せな気持ちになれるオススメの一作。
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