★★☆☆☆
~置き換えて咀嚼すれば~
2015年の米映画。アメリカンフットボールの選手に起こるCTE(慢性外傷性脳症)を巡る社会派ドラマ。実話を元にしている。
海外からアメリカにやってきた検視官オマル(ウィル・スミス)の元に、元NFL(ナショナル・フットボール・リーグ)のスター選手の遺体が届く。まだ50才だというのその脳はアルツハイマーのような劣化をきたしていた。調査を続けるうちに元NFLプレイヤーに同様の症状が多く見られる事が分かり、慢性的な脳への衝撃が時間をおいて問題を発生させている事が判明。オマルはNFLにこの問題を問いただそうとするが、巨大権益で守られた牙城はまるで揺るがない――。
コンカッションは脳しんとうの意味でまさに本作そのものである。往年のスーパースターがCTEの障害によって悲劇的な生活を余儀なくされているシーンは「あしたのジョー」でパンチドランカーにおかされたカーロス・リベラを見る思いである。
アメリカの国技でありスーパーボールなど含めて圧倒的な経済規模を持つアメフト。そのスポーツビジネスの根幹を揺るがす告発に対しNFLは「ヘルメット被ってれば大丈夫」など適当な受け答えでオマルを無視しようとする。アメフトはもはやアメリカのアイデンティティであり、それを傷つけるような行為は非国民だというのだ。
オマルがこの件に強く当たれたのも、海外からきた彼にとってアメフトに対する思い入れが薄かったからであろう。そして、自分にとっても薄いのである。日本ではメジャーなスポーツでは無く、基本的ルールも知らない者の方が多いだろう。アメフトのスター選手も知らない。したがってこの映画はアメリカ人でないと意味が無いかと言えば決してそんなことはない。巨大な組織に単独挑んでいくオマル医師と彼に影響されて正しい選択を選んでいく人々の姿には普遍的な感銘を受ける。なにより既得権益と上下関係でガチガチになった巨大組織にまつわるきちがいじみた騒動は日本でも枚挙にいとまがない。アメフトのことがよく分からなくても、身近なヒューマンドラマとして充分に楽しむことが出来るだろう。悲しいことではあるが身近なのだ……。
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