2009年2月3日火曜日

マクロスゼロ

★★★☆☆
~空気感を楽しむ作品~

初代マクロス直前の事件を描いたOVA作品。
マクロスをマクロスたる三種の要素、
「三角関係」
「アイドル(歌)」
「可変戦闘機」
を織り込めながら、宇宙空間に出ることなく全編地上で繰り広げられる物語。

特筆すべきは3Dモデルのレンダリングとして描画される可変戦闘機達のアクロバティックな空中戦。
3DCGになったとたん重みを失い、ぬるぬると軽い動きになってしまうアニメ作品が多い中、マクロスゼロのそれは不思議なほどセルアニメの印象を保っていた。
CG導入により書き込みが精細になったプラス要素だけが強く感じられる。封入のブックレットを見てその理由の一端をうかがうことができた。

通常CGのアニメーション設定では、動きの特徴的な転換点(キーフレーム)だけを設定し、その間の動きは一定の規則に従って自動的に設定される。マクロスゼロではキーフレームだけでなく、すべてのフレームに動きを手でつけて作成したのだという。
アニメ用語でいえば、つまりCGアニメは原画を描けば動画は自動生成なのだが、CGでも動画を設定した、ということになる。

自動で設定される動画は、数学的には正しくとも、感覚的に正しいわけではない。今作のスタッフはCGの定例的な作り方にこだわらず、「気持ちよく見えること」が重要なのだという原則を見失わなかった。それはツールに振り回されず、ツールを御したということだ。

気になる点としては、「3DCG」「セルアニメ」「背景画」の三つの要素がうまく組み合わず、妙な感触になった違和感あるシーンがちょくちょく現れること。特定話数(3話が気になった)のセルアニメクオリティが非常に低かったことが挙げられる。
幾つもの経路を持つ素材を破綻なく発注、管理し、組み合わせて価値ある絵に仕上げるのは、非常に大変なことなのだろう。

さて、物語としてみた時、マクロスゼロは結構めちゃくちゃである。強引で、ご都合主義で、定型的で……。しかし、見終わった後の気持ちよさ、切なくもすがすがしい感触を味わってみれば、不思議と些事に思えてくる。

おそらく、マクロスは理性でなく、感性で綴られる物語なのだ。

細かな点に突っ込むよりも、話に振り回されていつの間にかエンディング。
そうした勢いと、作品の感触を楽しむのが気持ちよい見方だと思う。

どの話数にもきちんと設けられた見せ場。
次話への引き。

OVA作品として、一定の作品価値を保ち続けたバランスの良い作品だ。

0 件のコメント:

コメントを投稿