★☆☆☆☆
~微妙な悪役大集合~
2016年の米映画。アメコミを原作とした複数のヴィラン(悪役)を結集させたアクション映画。
DCコミックス(アメコミの出版社)が抱えるヒーローコミックに登場する様々な悪役達を一つの部隊にして、強大な悪に対抗しようとする物語だが立て付けからしてなかなか厳しい。
◇悪役の知名度が低い
スーパーマン、バットマン、フラッシュといったヒーローの名前は聞いた事があるだろう(フラッシュは厳しいかも)がその悪役となるとどうだろうか。今作には「デッドショット」「キャプテン・ブーメラン」「エル・ディアブロ」「エンチャントレス」など多数のキャラクターが登場するが、知っている人がどれだけいるだろうか。自分は一人も分からない。最も有名な「ジョーカー」も出てくるが関わり方が特殊。ジョーカーがらみのキャラクターである「ハーレイ・クイン」は冠映画が存在するので最も知名度が高いだろうが、マニアックなことに変わりはない。
海外での人気は知らないが、このような知名度ポンコツのキャラクターを寄せ集めたところで、微妙な印象しか持てないというのが正直なところだ。
◇能力の構成がおかしい
同様の多数のスーパーキャラクターを集めた映画として最も有名なのは「アベンジャーズ」シリーズだろう。登場キャラクターがそれぞれに有名であるし、特殊能力が凄まじい。自由に空を飛べる万能装甲を身に纏った「アイアンマン」。別の宇宙の存在で神のような力を振るう「ソー」。無敵の盾を使いこなす強化人間「キャプテン・アメリカ」等々。凄まじい能力をみるだけでも元が取れるような魅力を持っている。弓矢が上手な「ホーク・アイ」。体術がすぐれた「ブラック・ウィドウ」など、極端に「普通の人」も登場するが、スーパーヒーロー達の凄さを際立たせる比較対象として機能しており、また、スラムダンクにおけるメガネくんのように、弱くても地道にがんばることの意義を見せつけて、スーパーヒーロー達と観客の溝を埋めてくれている。
対して今作の悪役達の、まずは能力の微妙なこと……。どんな銃器も使いこなすすごい殺し屋「デッドショット」。ブーメランが上手な「キャプテン・ブーメラン」。バットで容赦なく人が殴れる「ハーレイ・クイン」。そもそもこの世界のスーパーヒーローである「バットマン」も「ちょっとすごい装備を身につけたがんばり屋さん」なので、それに対する悪役もこの程度になってしまう。「エル・ディアブロ」と「エンチャントレス」は炎の精霊と魔女という凄まじい能力者であるが、今作ではバランスを取るためなのか、かたや影が薄いキャラクター、かたや悪役(今作で対立する勢力)という位置づけになっている。微妙な能力のキャラクターが全面に押し出されて来るので、ただただ雑魚がいきっているなあ、と感じる映画になってしまっている。
◇話がとても雑
先に挙げたが、結局未知の敵に対抗するために、事前に結成しようとした悪役正義部隊の一人が制御不能になって町を破壊しまくり、それを残りのメンバーが止めるというまさにマッチポンプの展開。そのくせ都市が一つ廃墟と化すような被害を出しており、いやこれはこんな部隊造ろうとしたのが間違いだよ。
味方も敵も単純な成り行きで戦っているに過ぎず、どんなに熱弁されてもバカらしく感じられる。
このような悪役(ヒーロー)大集合の映画は、個々の知名度と人気が必要不可欠だ。まずは個別のキャラクターについての映画を作り、少なくとも大人気キャラクターを中心に構成するしかないだろう。今作は早計すぎたのだ。
この作品の後「ジョーカー」がアカデミー賞を取るほどの評価を受けたが、どうやらどんちゃん騒ぎには向いていない描かれかたをされているようなので、悪役大集合の構想としてはマイナス。DCコミックスのお祭映画は、なかなかに行き詰まっている。
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