※リンクはPart1です。
★★☆☆☆
~けつが痛い~
冗長で長い。
この一言でこの作品の特徴がほぼ表現しきれる。
七作続いたこのシリーズもこれで最後。幾人もの監督の手を経てこの長いレースを完走しきったことに惜しみない賛辞を贈りたい。シリーズ制作を維持できないファンタジー大作もある中で、人気を持続しながら八作品を継続して出し続けるのはすごいことだ。
八作目はシリーズ初の3D上映。さほど3D感は強調されていないが、見やすく、アクションシーンの魅力を増加するそつない立体効果だった。どちらでも良いのなら3D版を見ればよいと思う。字幕版でも特に違和感を感じる点はなかった。
物語はシリーズ中盤からの流れを引き継いで、魔王との最後の決戦。バタバタ人は死に、追いつめられ、泥沼の中で延々もがくような雰囲気。
おそらく、ハリー・ポッター原作自体が、途中からおかしい。
爆発的なヒットを飛ばした一作目~三作目程度までは、未知の魔法世界を体験する驚き、喜びに溢れていたのが、中盤以降は出生の秘密やら宿命やら魔王の策略やら鬱に鬱にと潜り込んでいく。それはまるで「サルでもかけるマンガ教室」で「とんち番長2」が陥った状況だ。(わかりにくい例えですいません。本当にぴったりなので)
まじめにまじめに展開しすぎて、息を抜ける瞬間のない、重く、どんよりした作品になってしまった。誰もそんなの望んでいなかっただろうに。
今作はそういう溜に溜めまくった鬱屈を一息に吐き出す気持ちよさを持てたか? 残念ながら答えは否だ。最後もすっきりしない中途半端な印象で幕を閉じる。これまた例えで恐縮だが、「魔女の宅急便」で最後の飛行船事故の下りがまるでない状態だと言える。確かにその部分が無くともきちんと鑑賞すれば物語がまとまっているのは分かる。しかし、ここまでシリーズを経た果てなのだから、もっと分かりやすい喜びのシークエンスでまとめても良いのではないか。
加えて今作は先にも書いたように冗長だ。
スローモーションの多用。余韻を持たせるゆったりとしたシーンの頻出。緩急織り交ぜるバランスが悪いせいか、やたらと長く感じるのだ。正直お尻が痛くなり、3Dならではの姿勢を強要される感覚と相まって、ずいぶんつらかった。
一作を二つに割ったから? 最終編の重みを出すため? ともかく、そのあげくにあのラストなら、もっと早くまとめてハッピーなシーンを増やして欲しかった。
思うに、映画作品は原作に忠実だったのだろう。
原作を読んだわけではないが、一筋縄ではいかないぞ、という気負いを展開の端々に感じる。それは意固地で頑固な香りがして、少々鼻につく。とかく素直ではなく文学作品ぶろうとしているような。
これはイギリスのファンタジー作品全般に言える気がするのだが、教訓や宗教的寓意性のために、物語のつじつまや登場人物の心情を無視しすぎではないだろうか。もしくは長大な作品がために、一貫性を失っているのか。
結局、描かれるエピローグも内容は大団円のはずなのに不思議と敗戦国のけなげさと言った雰囲気で、終わったという満足感も喪失感も感じない。ただ、すべてのシリーズを見たという、内容とは関係ない達成感のみだ。
世界はそれでも営み、続いていくよという至極まっとうで地味な正論をもって、長いシリーズを終えている。それは志高く立派なことかもしれないが、このようなお祭り大作でそれを露骨にやられるのは、場違いな気がする。単純に言うなら、好みではない。
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