2019年12月9日月曜日

ターミネーター:ニュー・フェイト

ターミネーター:ニュー・フェイト [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]

★★☆☆☆
~女子会もしくは同窓会~

 1984年公開の「ターミネーター」からさまざまなナンバリング、関連作品を生んだSFアクション映画の2019年公開最新作。ナンバリングで言うと6作目になるが、さまざまな理由で評価が芳しくなかった3/4/5(新起動)を無かったことにして2の直系として位置づけられている。
 オリジナルの監督はジェームズ・キャメロンで1と2の監督後はちょっと意見を言うくらいみたいなスタンスだったが、今作ではとうとう制作として参加。ガッツリ関わったよ! というのが売りの一つである。
 

 未来からの刺客を撃退し、起こるはずだった世界戦争を回避した女性闘士サラとその息子ジョン。しかし「起こるはずだった未来」からすでに出立したターミネーターはその後も二人の前に現れ、二人は逃避行を続けざるを得ない事態となっていた。
 前作(2)から23年たった2020年。再び未来からの使者がメキシコに現れる。一人は体に機械を埋め込んだ強化改造人間。一人は流体金属と金属骨格で構成されたハイブリッドターミネーター。
 二人が守り、狙うのは誰なのか。また、なぜ、何のために現れたのか。守護者と暗殺者の戦いの中に現れるサラ。再び未来を賭けた戦いが繰り広げられる――。

 1に続いて2を大ヒットさせたジェームズ・キャメロンの関与があっても、シリーズの立て直しは出来なかった。
 3~5と比べて「直系だなあ……」とは確かに感じるが、見知ったところに帰ってきた安心感と同時に代わり映えのなさにがっかり。しかも冒頭でとてつもない喪失感を味わわされることになり、戻った故郷は冷たかった……、みたいな盛り下がりムードがずっと継続される。
 
 そらおもしろいよ!? 豊富なアイデア、でたらめにリッチなシーンの連続。ワクワクするし、ドキドキするし、映画の楽しみは充分に詰まっている。でも、「彼」とこれまでのがんばりをほぼ無かったことにされてしまうと、もう何しても、何を成し遂げても時間軸(世界線)が増殖するだけで意味が無い、という虚無感に捕らえられてしまう。
 
 冒頭で彼を殺し、それなのに無理矢理サラとターミネーター(アーノルド・シュワルツェネッガー)を連れ回すことに商業的打算を感じるのも辛い。二人のアイコンを並べることが今作最大のフックなのだろうが、そのために物語が犠牲になっている。正直二人の活躍もたいしたことない。「2」を覆す展開は欲しいが、「2」の続き感が欲しい。そのためにむりくり二人の立ち位置を用意して苦しい動機を持たせているのだ。納得感のあるはずが無い。ターミネーターにいたっては、実質新キャラなのだ。感情移入のレベルが上がりませんよ。
 
 物語の主軸である「運命」に立ち向かう人間メンバーがすべて女性なのも、もうこれははっきりとやり過ぎだ。もともとジェームズ・キャメロンは一番の重要キャラを女性にする事が多い。「エイリアン2」ではリプリーが子供を守って戦い、「ターミネーター2」ではサラがジョンを守って戦う。使命感と母性の相乗効果で生まれる驚異の力が観客に素直に刺さる構成なのだが、今作では「女性」の位置づけがおかしい。性差のない平等を目指したのかどうかは分からないが、「女性的とされる魅力的な要素」まで削り取ってしまっている。
 見た目がどうあろうが、全員がウホウホ筋肉バカでたおやかさも優しさも無い脅威の戦闘狂集団だ。だって、味方メンバーが「30年以上にわたって鍛錬と実戦をくり返したターミネーターキラー」「体に金属骨格とジェネレーターを埋め込んだ強化人間」「人類を勝利に導く人類司令官」だよ? もうね、人類ドリームチームですよ。「ターミネーター:エクスペンダブル」ですよ。
 こんな状況に叩き込んでシリーズの正史ですとか、キャメロンさんどうしちゃったの!
 全員中身を男にした女性映画なんて、それこそ女性抹殺の愚行じゃ無いのか。
 
 敵ターミネーターのギミックは新規性があり脅威感も充分。初見のときめきとこりゃやばいという圧力は本当に楽しいものだ。ただ序盤で能力を見せた後はそのインパクトを上回るシーンが無く尻すぼみ。流体金属の能力も上がっているようなので、体全体パチンコ化とか、旧式の火薬銃を腕に急ごしらえするとか、プラスアルファの使いこなしを見せて欲しかった。

 「2」は敵だったターミネーターが味方になるという大仕掛けがバッチリはまった。今作にも(難しいとは思うが)そういった大仕掛けが必須だったのだろうが、残念ながらそれを見出すことが出来ていない。「彼」の死をそうだと考えているならそれは間違いだ。
 マトリクス的に考えるなら、人類とマシンの戦いにさらに中立の存在が介入してくる展開はあるかもしれない。人類を滅ぼそうとはしないマシン陣営。そこがエージェントを送り込んできて三体のターミネーター(あれ? 今作も大体そんな感じ?)の戦いの中、不利な方に加担して戦いを継続させようとするとか。
 もしくは心を入れ替えたスカイネット率いるターミネーター軍団が人間と共闘し、第三の敵に挑むとか。歴代ターミネーターそろい踏みで敵陣営と勝ち抜き戦とかフックとしては価値ありそう。

 今作、邦題は「ターミネーター:ニュー・フェイト」だが、原題は「Terminator: Dark Fate」。おそらく「見えない運命」的なイメージなのだろうが、これではシリーズの「暗澹たる運命」である。またしばらくシリーズは地下に潜らざるを得ないだろう。

 さてキャメロン氏、5(新起動)の公開時に褒めちぎっていたのが後に手のひら返して苦言をくり返しているように、どうも信用ならない部分がある。今回も制作としての参加と言うことで、また無かったことにして監督復帰とかしても全然驚かない。そのための制作止まりでは無いかというくらい構えてしまう。「アバター」続編に集中と言うことなのだろうが、早いところ作り上げて中途半端な関与でほったらかしの「アリータ: バトル・エンジェル」の続編なりターミネーターの新作なりの監督に復帰して欲しい。


 

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