★☆☆☆☆
~止まらぬじじいの大暴走~
2015年のイギリス映画。何か垢抜けないというか、こぢんまりしていると感じたが、なるほど元はテレビシリーズだった模様。キャスト、スタッフはほぼ一新されたと言うことだが、テレビシリーズっぽさは抜けていない。
国際指名手配されているテロリスト集団の首領カシムがイギリスで確保された。移送を受け持ったイギリスの情報機関MIー5は、綿密に計画された襲撃計画によりまんまとカシムをその仲間達に奪われてしまう。その責任者であるハリーは解任されるが、MI-5組織内に内通者が居るとして独自に捜査を続け、潜伏していたカシムにたどり着くが――。
もう老人の域に入ったハリーが恐ろしいほどの能力を発揮してテロリスト達ばかりかMI5をひっかかき回す。その動機が「このままではCIAに英国内での活動も主導権を握られてしまう」状況への抵抗であった。といってもカシム強奪だけでなく、その後も後手後手に回ってハリー一人にしっちゃかめっちゃかにされるMI5の様子は、閉鎖こそ相応しいと感じさせる間抜けっぷりである。本部の規模もちゃちい。そんなに零細機関なのだろうか。
そもそもハリーの行動自体が組織としてのMI5存続を否定している。解任された元諜報機関員がテロリストと独自に接触して――という展開なわけで、そんなやつを雇っていた組織が政府から糾弾されないわけはなかろう。
この大いなる矛盾がある限り、この作品は荒唐無稽なスパイごっこ映画に分類されるべきものだ。それなのにシリアスに演出されるものだから、観ている方は画面とシナリオのちぐはぐに最後までクエスチョンマークを下ろせない。ブレーキとアクセルを同時に踏み込むようなもので、精神的に良くない。潔くないのだ。
話は二転三転して先が読めず、中盤まではどうなるのだろうと興味を持ってみることが出来るが、終盤の展開がハリーの動機と考え合わせると予測できる範囲を超えたばかばかしさで、時間を返せとがっくりした気分になってしまう。残念ながら「まじめに見て損した」と感じてしまった。つくった人も見た人も、モチーフになった各組織も、誰も得しない一本なので、このまま雑多な映画の海に沈んでしまうのが良いと感じる。
ちなみに007ジェームズ・ボンドが所属するのはMI6、秘密情報部であり「国外の政治、経済及びその他秘密情報の収集、情報工作を任務としている。」(Wikipedia)とのこと。MI5は「保安局」でありイギリスの国内治安維持に責任を有する情報機関。何というか、そりゃ地味な映画になりますわな。
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