★★★☆☆
~実写の思いもよらぬ効果~
まずはあらすじ。
※小一息子の感想(聞きとり筆記)
トムとジェリーは町に出かけて、けどいつものけんかで世界が注目した結婚パーティーを破壊してしまった。そして、タッグを組むことになったトムとジェリーはまずはお嫁さんを連れ戻しに行き、ペットの猫をつかって結婚式のある場所に、そしてエンディングで、その後に少しシリーズが続いた。そしておわり。
トムが飛んで落ちたところがおもしろかった。トムはちょっと詰めが甘かった。二人が結婚できて良かった。
改めて読んでみるときっちりポイントをつかんでおり、長い映画を見られるようになったんだなあと感心してしまう。(親ばか)
2021年の米コメディ映画。トムとジェリーは自分も子供の頃から見ていたし、息子がもっと小さい頃から、今に至るも放送している。何と息の長く、普遍的なコンテンツなんだろう。息子と一緒にテレビのトムとジェリーを見ていて改めてそのクオリティの高さに驚いた。
トムとジェリーもシリーズや製作者が移り変わっており、どれがどれなのか判別できるほど詳しくないのだが、ともかく自分が見ていたような、とても古い作品で、人間が足下しか出てこず、効果音が音楽に合わさって構成されている作品群について、再見の驚きが大きかった。オーバーアクションでとんでもない目にあう二人(主にトム)のそのシチュエーションの豊かさ。どんどこどんどこ進んでいくバイタリティの強さ。小気味よいアニメーションは時を経ても、その快感に変化は無かった。そして最も感銘を受けたのが、音楽との融合である。昔の映画では無声の映像に合わせて音楽隊が音楽を奏でるといった上映方法があったようだが、それをアニメーションの上で再現している。ディズニーも同様の演出を行っており、当時のアニメーション界隈の定石だったのかもしれないが、不思議と古いディズニーアニメは再放送ループには乗っていない。記憶にあるのはトムとジェリーのそれなのだ。音楽だけでなく、作品と一体となって記憶に残る体験なのだ。
忍び足の板の音を弦楽器(?)が響かせ、ドタバタの部屋の損壊はシンバルがトドメをさす。音楽と効果音が一体化している。
新旧ファン二人で見にいったトムとジェリーの映画。今作の最も大きな特徴は、実写映画の世界でアニメーション調のトムとジェリーが活躍するという物。同様の組み合わせで記憶に残るのはロバート・ゼメキス監督の『ロジャー・ラビット』(1988)であるが、実写との合成はやはりぎこちない物だった。
今作ではアニメキャラクターは3DCGで作成されているが、印象としてはブラシ処理(陰影をくっきり分けずグラデーションでなじませている)のセルアニメーション調となっている。3DCGの採用によりカメラの設定、動きと厳密にマッチングした彼らのなじみ具合は凄まじく、全編で違和感を覚える部分はほとんどない。数少ない気になるのは、実写キャストとのからみで何となく不自然だな、と感じる部分。キャストの身のこなし、視線の送り具合がわざとらしい、かもしれない。大体が主役二人に目を奪われているので小さな問題だろう。
実写との融合で最も強烈な効果となったのは、その「痛々しさ」だろう。
例によってぺちゃんこになったりたんこぶだらけになったりするのだが、その打撃の痛そうなこと痛そうなこと。アイロンをぶつけられるシーンがあるのだが、もうこれは絶対お約束の展開だと分かると、くるぞくるぞ! の期待感(痛い予感)がアニメーション以上なのだ。かといって悲惨で鬱な印象になる事は無く、すぐに立ち直って次のドタバタを始めるトムにがんばれ―、といいたくなるばかり。さらに部屋をめちゃめちゃにしてしまうわけだが、このやってしまった感も実写ならではの説得力。これは実写化の大きな楽しさだった。
どの部分をアニメにして実写にするのかという線引きも上手。トム、ジェリー、スパイクなどのアニメーションキャラクターはもとより、市場で扱っている魚といった小物もアニメーションだったりする。その区分ルールは不明だが、キャラクターだけではないことで、実写とアニメの融合がより自然になっている。
残念だったのは音楽。上述したようなテレビ版の効果音含めてBGM化するという方針は取っていない。これはまあ台詞のある長編映画としては妥当だと思うが、映画の各所で流れるボーカル入りの楽曲が、ラップ調なのだ。今時クラシック調のオペラも無いのかも知れないが、これらは(少なくとも僕のイメージする)トムとジェリーらしくなかったと思う。今はこれで良いのかもしれないが、ずっと後に見返すと楽曲が浮いて感じられるのではないだろうか。クラシックなら、文字通りすでにクラシックなわけだからこの先も古びることは無い。
公開初日の映画館、しかも朝一上映だったので、結構人が入っていた。子供連れがもっと多いかと思ったが、小学校低学年は息子くらいだったかも。トムとジェリーは小学校中学年以上のコンテンツなのかな。まあ確かにポケモンに比べれば「渋いな」と思うが、息子はとても楽しんでいた。
事ある毎に笑い声が上がり、やっぱりコメディはみんなで見るのが楽しいな、と再確認。映画館で映画を見るのは、やっぱり楽しい。
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