2021年3月22日月曜日

<テレビドラマ>岸部露伴は動かない

 

★★★☆☆
~三話目だけ違和感が強い~


 2020年に放送されたテレビドラマ。『荒木飛呂彦』氏の人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」の第四部に出てくる「岸部露伴」というキャラクターのスピンオフ漫画、ならびに小説が原作であり、なかなか深層化している。
 岸部露伴は人気漫画家という設定で、創作活動に身を捧げる奇人変人となっている。多数の特徴的なキャラクターが並び立つジョジョシリーズの中でも際立ってキャラクターが立っており、様々な物語に接続しやすい立場(「漫画の取材」で事足りる)もあって案内役としてぴったりである。

 人気漫画家である岸部露伴は特殊な能力を持っている。ヘブンズドアーと名付けたそれは、人の体を本のように変質させ、ページをめくってその者の歴史、経験を読むことが出来た。
 「リアリティのある漫画」に身命を賭す彼のもとには様々な奇妙な案件が舞い込む。漫画の題材とするため、露伴は奇妙な冒険を繰り返していく――。


 
 荒木氏の漫画は実にファッショナブルであり、キャラクターたちの服装やポーズが非常に「いかれて」いる。たとえば第四部は高校生たちが主軸となる章なのだが、学生服のバリエーションがすさまじい。刺繍や切れ込み、アクセサリーをちりばめ、実用的ではないがファッションショーの衣装のようにきらびやか。漫画の中の決めポーズもモデルのポートレイトのように腕を交差し、体をねじり、躍動感あふれる物となっている。
 実写化と聞いてまず心配になるのはこの特殊なビジュアルがどう再現されるのかということだが、このテレビドラマは非常に上手い塩梅でこれをクリアしている。ファッションもポーズも原作の雰囲気を反映させた上で、動画として、実写として許される範囲にとどめている。さらにヘブンズドアーの能力も実写として違和感のない表現に落とし込んでいる。この時点で賞賛に値する。



 ドラマは三部作として三夜に分けて放送されており、それぞれの原作は「富豪村(漫画)」「くしゃがら(小説)」「D・N・A(漫画)」となっている。本来関連のない三つのエピソードだが、最終話である「D・N・A」の主要キャラを全てに登場させて縦の串としており、これはテレビドラマオリジナルの改変。確かに個別のエピソードをつなげて世界観を補強しているが、第三話の内容がそれまでと違いすぎているので、全体の評価を道連れにしてしまっている感がある。

 どうも第三話だけおかしい。原作がどんな内容か未読だが、かなりの改変を行っているのではないか。
 それまでは「人の体を本のようにめくる」という能力だったのに、本当に書籍の形にして、しかも本人とは別に取り出して鑑賞可能となっているのだ。さらに開いたら飛び出るギミック付きの本になっている。家族の繋がりを表現するオチのためにこの形になっているのだと思うが、それはあまりに脚本の都合優先ではないだろうか。原作ではこのような展開ではないだろう。
 原作のままでなければという事はないが、「能力」という制限を勝手にはずされると物語の枠組み自体が揺らいでしまう。「決められたルールの中で何とかする」(何とかなっているように勢いで見せきる)というのが「ジョジョの奇妙な冒険」の基本スタンスだと思っているので最後の最後でけちをつけられた印象になったのが残念。

 他の原作エピソードにある様々な台詞を入れ込んでいるのは楽しいお遊びだが、いささか唐突に差し込まれている。
 お遊びよりも本筋で原作への愛を表現して欲しかった。



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