2009年3月14日土曜日

エイリアン2

エイリアン2 [Blu-ray]

★★★★
~相似拡大+α~

映画の二作目といえば駄作が相場である。
その理由はジンクスと言うよりも、現実的な諸条件の帰結であろう。
いわく、二作目が作られる限り、一作目は一定の評価を得る内容だったということである。
二作目はその高いハードルを越えなければならないうえ、おそらく、評価は前作時点が基準となり、それよりもどれだけおもしろいのかという見方をされる。
これはかなりのハンデだ。

もちろん続編の利点も少なくない。
一から世界観を構築する莫大なコストを削減できる分、他の部分に注力することが出来る。

つまり二作目で重要なのは、どこを残し、どこを発展させるかということになるだろう。

本作の監督ジェームズ・キャメロンは二作目で二度もヒットを飛ばした希有な監督である。言わずもがなの代表作『ターミネーター2』と、本作エイリアン2である。
続編の手本のような本作は、どのように構成されているのだろうか。
ネタバレ前提で書き進めるので、未鑑賞の人は気をつけて。

''This time it's war.''

「今度は戦争だ」というキャッチコピーが示すとおり、前作では一匹だったエイリアンが群をなして襲いかかってくる。だからといって前作の本領であった密室サスペンスの要素がなくなるわけではない。
舞台を惑星上に移しつつも、限定された基地空間のみを活動範囲とすることで、エイリアン増加と比例する程度の舞台拡張を行っている。つまり、密度を変えずにスケールアップを果たし、特有の圧迫感を再現している。

この例のように、2では1の主要要素を取り込みつつ、それを前作から拡張、スライドさせて、続編の魅力にすげ替えている。
気がついた点を見ていこう。

◆守るべきもの
主人公リプリーは我が身だけでなく、守りたいもののために奮闘する。
あまり目立たないが、前作では猫の為に結構な危険を冒している。
今作ではもちろん一人生き残っていた幼い少女。
この要素のおかげで恐ろしい物語の中にウェットな情感が付加され、リプリーの魅力が強められている。

◆未知の生物
エイリアンの生態とそこから生まれる圧倒的な能力はシリーズの魅力の一つである。
前作では卵から孵化し、幼生態となって獲物の体内に入り込みそこを苗床にして成長という恐ろしいサイクルが描かれた。これなどには恐怖とともに、動物ドキュメントを見ているような発見の興味を感じる。
そしてその時点で約束されていた謎「誰が卵を生んだのか」について、群生としての生態が2では描かれ、なぞるだけではない世界観の拡張が行われている。

◆人間同士の不信
人間とエイリアンという対立だけでなく人間側の中でも対立関係が存在する。
前作では乗組員の一人が社命を執行する人造人間という設定だったが、
今作ではその軸もうまくずらして構成してある。
リプリーは1の痛い経験から人造人間に対しての不信感を拭いきれない。これは映画を見ている側にとっても同様で、いつ裏切るかもしれないという緊迫感が流れ続ける。
その注視の脇を抜けるように、最も憎まれるべき行為を行い続けるのは、ただの人間であった。
前作も今作も冷徹に営利を追求する会社が敵だということに変わりはないが、ここもうまく再構成している。

このように様々な点が前作を継承しつつ発展しており、続編作成の一つの手法をよくあらわしている。

このように考えずとも、派手になっておもしろそうな要素が増えていて。
もちろん今作だけを見ても、十分に楽しめるだろう。

浅くも深くも、わかりやすい見事な作品。

 


 一作目『エイリアン』の自分の感想はこちら。

エイリアン [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]
★★★★

~遠すぎない未来像~

 三作目『エイリアン3』の自分の感想はこちら。

エイリアン3 [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]
☆☆☆☆
~きれいだけど、おもしろくない~ 

四作目『エイリアン4』の自分の感想はこちら。

エイリアン4 [AmazonDVDコレクション] [Blu-ray]
★★☆☆☆
~女達の映画~

同じ監督による傑作『ターミネーター2 』の自分の感想はこちら。

ターミネーター2 4Kレストア版 [Blu-ray]
★★★★

~SFアクションの金字塔~ 

 

 

0 件のコメント:

コメントを投稿