2009年3月30日月曜日

イノセンス

★★★★☆
~精神のスプラッタ~


映画館に続き、BDで鑑賞。
一言で言うと、とても趣味の悪い映画だと思う。
映像のクオリティ、脚本、実験的な映像の刺激。
これらはどれも高レベルで、きちんと関連し合っているが、そこで描かれるのは、精神的な解剖手術。
もともと精神医学は精神の解剖学だと思うが、この映画はSF設定で特異な状況を生み出し、その術式を現実ではあり得ない、象徴的なものとして展開している。

人間の魂がコピーされ、封入された人形。
そのコピーの人間性は、どこまでが認められるのか。

脳への情報を偽造されうる電脳社会。
現実と虚構はどう切り分ければよいのか。

すべて、人間が自ら生み出した、矛盾。
合わせ鏡のように、光線の届く限り続く不気味な入れ子構造。
未来の、現在と関係のない話ではない。
同じ形をした相似形の問題は、人類誕生以来(「意識」の誕生以来)の課題である。

いわく、人間の意識とは何か。
魂とは、何か――。

かけた労力に見合った効果が発生しているのかどうかは疑問だが、一つの作品として、価値ある到達点であると思う。
ただ、実写のような映像を追求し、逆に実写ではない違和感を増幅しているのは、期せずしてなら失敗であろうし、故意ならばやはり悪趣味だ。

ブルーレイディスクで鑑賞したが、恐ろしいかき込みが行われたこの作品において、高精細画面で見る価値は想像以上に高い。
「現実感」が、作品のテーマと密接に結びついているため、常に圧力をかけられ、高密度に押し込まれたようなこの作品の一場面一場面は、演出要素として欠かすことはできないものと考えられる。

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