2016年4月5日火曜日

スター・ウォーズ/フォースの覚醒

★★☆☆☆
~均衡のなれの果て~

J・J・エイブラムス監督。2015年公開のアメリカ映画。

言わずと知れたスターウォーズのナンバリングタイトル。
4⇒5⇒6⇒1⇒2⇒3の順で製作、公開された三つ目の三部作の1作目。
ちなみに4/1/2/3はジョージ・ルーカス監督だが5/6は異なるので、初の別監督エピソードというわけでもない。

4/5/6でアナログ特撮の伝説となり、1/2/3でCG技術の地平を切り開いたスター・ウォーズ。
小説やアニメなどで映画以外にも広がり、厚みを増した世界観。飽和したファンにより新シリーズにかかる期待はとんでもない重さ。

ここでJ・J・エイブラムス監督。
好き嫌いはともかく、「期待水準に達する作品をコンスタントに生み出す」監督として無双の安定感を誇ることは認めざるを得ない。
何かとライバル扱いされるもうひとつの伝説的SF作品「スター・トレック」の映画監督もつとめたのだから、なんちゅう強心臓なんや!
こんなん普通の精神では耐えられない重圧だろうに!

出来上がった作品を観て思ったことには、やはりこの監督の安定感はすごい。
なんだかんだで値段分の映像であるし、過去作へのオマージュもたっぷり。
スター・ウォーズらしい映像と話がすらすらと展開されていく――。

けれど、見終わった後に心に残るのは新しいドロイドBB-8の立ち居振る舞い程度。
基本的にはルーク三部作(1/2/3)をなぞる展開で、各要素を極限まで大げさにした感じ。
「デススターを惑星規模に」
「ダース・ベイダーよりも宿命度の高い敵役を立ち上げる」
「ルーク三部作の要素をこの一作に凝縮」
これらがおもしろ差に結び付かずに上滑りして腑に落ちないまま終劇。
なんといっても主人公が誰か分からず、おもしろ黒人枠がヒーロー役を務めているというのが腑に落ちない。

・スター・ウォーズは結局設定ガバガバの雰囲気SFだよね!
・話しも強引でむちゃくちゃだよね!
・そんな雰囲気もきっちり再現したよ!

こんな開き直りが透けて見える。(そうだよなあと思ってしまえるのがこれまた悔しい)
前シリーズが何やかんや言われながらも挑戦して切り開いた映像表現。そういった闘魂がまるで感じられない作品だった。
お偉方(ヘビーなファン)の意見をすべて汲み取って上手くパッケージングしただけ。最小公倍数を求めただけのように感じる。

これまでの文面でにじみ出ていると思うが、自分はこの監督が好きではない
監督ファンの方には申し訳ないが、監督と視聴者としてどうにも根本的に相容れない要素がある気がする。
どの作品も「秀才のとる及第点」の雰囲気で、その薄っぺらさがはがれる前に次の話題作を手がけることで自分の地位を保っているように見える。
上手いが、誰かの心の一本になる作品は作れない監督なのではないだろうか。
自分の手できっちり作るというより、時代の空気をきちんと理解し、商品価値を組み立て挙げて市場に投下するプロデューサーのように感じる。
美術界で言う「村上隆」みたいなイメージだ。

それはそれで希有な才能であり、果たすべき役割があると思うが、いびつにゆがんだ思い込みの激しい情念がスター・ウォーズには似合うと思ってしまう。
ともかく新三部作の立ち上げにあたって、この「7」でこれまでの総括が終わった訳なので、次からの新展開に期待である。(監督も違うしね!)
……と言いたいところだが、結構お話しがまとまってしまったので、もう十分かなという気分も。R2D2が動かないままならきっと次も見に行ったと思うけど、彼もきっちり復活してしまったから……。

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