★★★★☆
~たそがれの一途な想い~
今回は中学の頃から温存されている自分のオタク心が共鳴した作品だったので、全般に気持ち悪い感想になっているかも知れません。
TRUMPLEから発売された18才以上向けのいわゆるエロゲームを原作としたTVアニメ。全13話。2013年に放送。
ゲーム自体は2010年にWINDOWS版として発売されている。
マルチエンディングのゲームを原作としたアニメはいずれかの「ルート」を採用せざるを得ない。
多くの場合メインルート、トゥルーエンドが採用され、その他のエンディングに至るエピソードは省かれる。言ってしまえばメインヒロインとは違う女性を選んだ場合のエピソードは描かれない。が、反対に言えば、ゲームをプレイすればそういった物語を選択して楽しむことができるのだ。これはかなり魅力的な宣伝である。
※しかもプラットフォームがWindowsであるならば、H要素も完備状態となり付加価値は極大となる。
なので、このタイミングで関連商品(別プラットフォームへの移植や続編)を発売するのが定石だろう。
ところが本作はアニメ放送のタイミングでも何らリリースが為されない。定番であるマルチメディア展開としてのうまみを無視している。これが果たして狙ったことなのか、何らかの不都合(ゲームの開発会社自体今作をもって活動休止となっている)で単独投入となったのかは分からないが、一つの可能性として製作者が「この話に魅力を感じたから」ということもありえるだろう。ゲーム自体様々な突っ込みを受けつつもしっかりファンのついている作品のようであり、自分もアニメ視聴ではストーリーに魅力を感じた。
物語は海辺に立つ高等学校「内浜学園」の天文学会というサークルに所属する男女が、校内校外の不思議な事件を追っていくという内容。主人公(男)はサークルメンバーの一人(もちろん女性)の家に同居していたり、謎の記憶喪失少女が登場しても、身元不明なまま何ら社会的な問題なく同級生として収まっているなど、各種お約束に満ちている。自分などは懐かしい空気さえ感じた。「うる星やつら」とか「らんま1/2」みたいなスラップスティック(ドタバタ喜劇)として楽しめそうな雰囲気。
しかし見ていくほどに不可思議なエピソードがちりばめられ、大仕掛けが動き始めると、喜劇は一転切ない物語に姿を変える。「どうにもならないことを、どうにかしようとあがく」のは自分の好きなモチーフなのだが、趣味が合致したという形で最後まで一息に楽しむことが出来た。
演出は一般に言って間延びしていると感じるし、作画も波があるが、物語を伝えようという気持ちが表に出ている作品だと思う。
放課後活動が中心であるのでたそがれの画面が多いこと、海辺の風景が多いことも懐古感を刺激する。
合う合わないが大きい作品だと思われるので強くすすめることはできないが、「一途な思い」「それを見守る第三者」が嫌いでないなら見てみて欲しい。
ところで最初数話分のOPアニメーションがえらくカクカクである。原画部分だけ存在して動画が存在していない感じでこれはこれで貴重な……。OPだけは頑張る作品も多いので大丈夫かいなと心配になったが、途中から非常に細かい中割が入り滑らかなアニメーションに差し替わった。
制作が間に合わなかっただけなのだろうが、徐々に登場人物の魅力が見えてきた頃、つまり自分の中でキャラクターが動き出したタイミングで差し替わったので非常に心情にマッチした。これが演出なら凄いなあ。
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