★★★☆☆
~絵が動く気持ちよさ~
「天元突破グレンラガン」の今石洋之監督作品。2クールのテレビアニメ。
特別な「糸」で縫製された極制服(ごくせいふく)。それは着る者に強大な力をもたらす。
中でも特別な「意志」を持つ服を身に纏う女子高生、纏流子(まといりゅうこ)は父親の敵を求めて本能字学園へ転校、入学。
学園は生徒会長、鬼龍院皐月(きりゅういんさつき)を頂点とした身分制度で統治されており、極制服を着こなす力こそが全てだった。様々な部活動や彼女を守る四天王との戦いを繰り返し、流子は父の敵、極制服の謎へと近づいていく――。
物語と設定には大きな展開や仕掛けが用意されており最後まで視聴者を牽引する。が、なんといっても今作の魅力は戦闘におけるキャラクターの動く気持ちよさ。タメとツメのきいたメリハリある動きがリミテッドアニメーション――動画枚数の限られたアニメーションのこと。テレビアニメの苦しい台所事情の中で発達した――の健在を宣言する。
このこだわりは演出にも現れており、止め絵やハーモニー処理を多用した、いわゆる出崎演出。文字のみで構成された画面。話数単位での動画メリハリ(戦闘シーンの少ない回と戦闘主体の回)など、TVシリーズで高いクオリティの手書きアニメを作るための努力にあふれている。
これら方針、感触はグレンラガンでも同様だったが、今作はCGをうまく活用することでさらに画面密度を高めている。
特に主人公達の変身シーンはCGと手書きを組み合わせ、どちらか一方では作り上げることが出来ないだろう領域に達している。変身の最後にポーズを決めるシーンでは最後に腰がキュッと入り、欲情してしまいそうになるほど人物が魅力的に見える。
このように割り切った作りのとんがった作品なので、あきらめた部分が目につくのは確か。
戦闘以外のシーン、とくにギャグに偏った部分は動画枚数が極端に抑えられている。というより、動画がない。ポーズを切り替えてみせるだけの紙芝居の風体になっており、タイミング取りが決まっているため小気味良いのだが、なんだか古いフラッシュアニメーションを見ている気分になる。「キッチン戦隊くっくるん」みたいな感じでせわしない。
また、これは監督の持ち味でもあるのだろうが、下品の度が過ぎるとも感じる。
アニメの魅力は動きとエロ! つまり女体を動かすことだ! 的な意気込みが伝わってくる。
これ自体はその通りだと思うが、変身シーン――変身後は非常に露出度の高い、ほぼ丸見えの格好になる――がすでに限界ギリギリ。エロ以外の意味があるとは思えないアングルのカットがサービス過多のように感じられた。
それ以外の下品さも自分にはきつすぎる。下町に住む一家にずいぶん助けられるのだが、彼らの生活様式、発する言葉などを含めたモラルが下品すぎる。物語を進めていくのに気の抜きどころは必要だと思うが、嫌悪感に気を緩めることが出来ない。
どんどん3DCGの範囲が広まってきているアニメーション業界だが、こういった作品を見ると、やはり良く作られた手書きアニメーションには圧倒的な魅力がある。3DCG技術が高まっていけばやがてそういった分野も置き換えられていくだろう、というイメージを何となく持っていたが、手書きの魅力はその先にはないのではないかと感じた。
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