2014年12月14日日曜日

パンズ・ラビリンス

パンズ・ラビリンス [Blu-ray]

~ロマンティックなグロテスク~
★★★☆☆

「パシフィックリム」で名を馳せたギレルモ・デル・トロ監督が描くダークファンタジー。
このダークファンタジーというくくり。テレビの解説欄に書いており、一体どういう区分だろうと不思議に感じたが見てみると確かにこれはダークファンタジーとしか言いようがない。

まさに暗鬱なおとぎ話

第一次世界大戦後の混沌としたスペイン内戦。主人公オフェリアは母が独裁政権側の将校と再婚したことで最前線での生活を余儀なくされた。
多感な時期のあまりに過酷な環境の中、彼女はおとぎ話に心の平穏を求める。

少女の空想癖という点では「赤毛のアン」と似通っているとも言える。だが、アンのそれがふわふわと浮かれた美しいものであるのに反して、オフェリアの空想は土着の民間信仰が潜在意識下で目を覚ましたような、暗く醜くい陰鬱なものだった。
心の逃げ場所である空想までもがそのようなふさぎ込んだ世界だということがとても切ない。しかし、空想は心を投影するものでもあるのだから、その暗さは確かに彼女の世界としてとても説得力がある。
映像は空想を現実的に描いており、両者が差異なく感じられる事はこの物語においてとても重要だ。どちらが本当なのか、見ている者も分からなくなる。言わずもがな渦中のオフェリアにとってはまさに現実なのだろう。
汚らしく嫌悪したくなる空想なのに、懐かしく、美しくさえ見えてくる奇妙な感触。
最後にはどうか空想が現実であって欲しいと祈らずにいられない。せめて彼女の魂は救われたのだと思いたい。

同様に少女期の空想を映像化した作品としてピーター・ジャクソン監督の「乙女の祈り」を連想する。こちらも空想を高いクオリティで可視化し、現実との境界を曖昧にした作品。ピーター・ジャクソン監督はマニアックな作品ばかり作っていたが、後に指輪物語三部作を作り上げる。ギレルモ・デル・トロ監督もこの後「パシフィックリム」でマニアックさはそのままに名を馳せた。両監督について共通に言えることは、グロテスクとロマンティシズム。そして映像の完成度の高さ
マニアックなこだわりが大きな題材と結びついた時、巨大な妄想の塊が世に現れるのだ。

 

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