2015年11月24日火曜日

バタフライ・エフェクト

Butterfly Effect [Blu-ray] [Import]

★★★★
~繰り返す一途~

幼い頃から突然記憶が途切れる障害を追った青年が、その謎と仕組みを解き明かす物語。
過去を繰り返して望む結末を追い求める「ループもの」の典型だがアイデアと説得力に富んでおり、オリジナリティを強く感じる。

繰り返しが始まる前にきちんと本筋の人生を描き、そこから改変を行うという段取り。
このおかげで時系列がバタバタするややこしい話なのに理解しやすい。

主要人物を絞り、彼らの人生改変を描くことで繰り返しの影響、その功罪を一目瞭然に浮かび上がらせる。
繰り返しの基点となる場所時点を限定していることも、混乱せずに物語を楽しむことの手助けになっている。
歴史を書き換えようとする物語なのに、パラドックスが起こらない設定となっていることも興味深い。

繰り返せるのに、何度も失敗を繰り返す切なさ。迫るタイムリミット。くじけない一途。
設定に踊らされるのはなく、描きたい内容のために設定を完備している作品。万人に勧められる一本。

DVD特典として上映版とは異なるエンディングを複数収録しているバージョンがある。
特に監督自身が本来のエンディングとした物は、当然だが作中の伏線(手相について)が最も回収された形に収束しており気が晴れる。
その上で正式決定されたエンディングが最も良い形だと納得することも出来るので必見。

あるスキャンダルの覚え書き

あるスキャンダルの覚え書き [Blu-ray]

★★☆☆☆
~もはやホラー~

貧困地域のハイスクールに勤めるオールドミス。
若い女性教師が生徒と不倫している事を知った彼女は、良き理解者の立ち位置で彼女に近づいていく。実際にあった事件を題材にしているとのことだが、いったいどこまでが実際なのか不明。

孤独な初老婦人は人とのふれあいを求めていたのか。優位な立場で善人を演じる自分に酔いたかったのか。美しい女教師に同性愛的な欲情を感じていたのか。若い姿を自分と置き換えて体験していたのか。

オールドミスの目的がはっきりせず、恐ろしい。社会派というよりもホラーのようだと感じた。渾然となった色分けされない感情の渦が見える。
ラストシーンも、恐ろしいといえばなんとも恐ろしく感じられる。

タイム

TIME/タイム [Blu-ray]

★★☆☆☆
~物語が遠い~

遺伝情報至上主義社会の静かな反乱を描いた「ガタカ」。
人工のデジタル女優に振り回される映画監督の物語、「シモーヌ」。
魅力的な作品を出し続けるアンドリュー・ニコル監督の作品なので期待大きく視聴したが、肩すかしな印象となった。

全ての人間の腕には、死に至るまでの「残り時間」が表示され、労働することによってそれを延長する世界。金銭が時間に置き換えられ、バスに乗るのにもコーヒーを飲むのにも自分の残り時間を消費する。莫大な時間を持つ富裕層は隔離された都市で自由に暮らし、貧困層はその日を生きる労働に終始する。
現実でも、人間は人生の持ち時間を労働によって金銭に変えて生活している。自分の持ち時間を金銭と同一にするという設定により、実際に存在しているが意識に上りにくい人生の時間、つまりは命を可視化するという大仕掛け。

おもしろいのは個人の時間は互いに委譲可能ということ。お金でもあるのだから当然だがこれがドラマを生み、同時に世界観の構築を難しくしてしまっている。
貧困層に属する主人公は工場でその日生きる時間稼ぎに精一杯。ある日突然時間の大富豪となった主人公は、富裕層の住む都市を訪れ、この世の仕組みと理不尽を目の当たりにし、一人の女性と出会う。
設定にときめくし実際そつなく描かれていく物語は最後まで予断を許さない。残念なのはこれが現実感をもったSFではなく、おとぎ話に感じられることだ。
大仕掛けな分、つじつまの合わない所が随所に溢れ、それが目に付く。整った画面で淡々と描かれているため、勢いでごまかされることなく違和感が降り積もっていくのだ。どのような雰囲気かというと、「シモーヌ」を見た人ならば、その劇中で上映された映画を2時間枠にした物というのがどんぴしゃり。耽美で象徴的。悪くいえば障子越しに見た景色のようなあやふやさ。

大仕掛けな設定と表現手法が食い違っている印象。同じような要素を持つ「ガタカ」は設定の不確かさが浮かび上がることなく視聴できた。舞台を広げすぎずこぢんまりと納めていたことが有利に働いたのだと思う。
どこまで話を広げるのかを見極めるのは実に難しい事なのだろう。

ブラックブレット


☆☆☆☆
~すぐに消え去る~

ライトノベルを原作としたワンクールの深夜アニメ
題名だけメモしておいて後で感想を書こうとして数ヶ月。メモをみてもこんなの見たっけと思い出せないくらい印象が薄い。
突如現れた怪物に蹂躙されてあっという間に絶滅の危機に陥った人類。対抗するために特殊な子供と管理者のバディが構成され、そんなコンビ達が怪物と戦う世界。
主人公に盛りに盛った設定。出てくる女性はすべて自動的に惚れていく展開。なんのこだわりもなくお定まりのルールで進んでいく物語。
原作は未読だが、シチュエーションありきでそれをうまく繋げられていないのではないか。感情も状況もバラバラのまま話が進んでいく。小説だと読者の思い入れと想像力でカバーできていた苦しい部分が、映像化によって白日の下にさらされてしまった。つまり、もともと映像化に向いていなかった脚本をうまい丸め込みなしにアニメにしてしまったということで、幸せな作品になりそこなったのだと思う。
無理矢理残酷な展開を入れる趣味の悪さも際だっており、このまま埋もれて行くだろう作品。

シャッフル

シャッフル [DVD]

★★☆☆☆
~全体にチープ~

米国版火曜サスペンスといった感じ。
なぜか時間の乱流に巻き込まれ、一週間の毎日を違う順番で過ごすことになった女性が主人公。ややこしい設定なので考えるのも説明するのも大変なのだろうが、残念ながらいずれも平凡な印象。
事態に混乱して大騒ぎしているのが主人公だけなのだが、独善的な印象の主人公に没入できず、作品全体が空回りな印象に。

アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン

アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]

★★☆☆☆
~花火見に行こうよ~

2015/07/05 市川東宝で鑑賞。
アイアンマンをはじめとするマーブルの人気ヒーローがチームとなって戦う夢のような作品。
「各ヒーロー作品」⇒「アベンジャーズ1作目」⇒「各ヒーロー作品」⇒「アベンジャーズ2作目(これ)」という長大なプロジェクト。
それぞれのヒーロー作品を出して十分に盛り上げた末の渾身の一撃。
各ヒーロー作品も欠かさず見ている自分が見ないはずがない。

予告編では壮大なボーカル曲に乗せて出し惜しみのないヴィジュアルイメージが展開。
どうあっても無理矢理面白くなるだろう、という信頼感が凄まじい。

してみてみると、確実に値段分の価値を超える映像であり、そのお祭感、金に糸目をつけない感は期待を裏切らない。
だが、面白いかと言えばバカバカしさが上に来る。このあたり含めてスターウォーズⅠⅡⅢと同じ印象。

突っ込み所には事欠かない。

そもそもがマッチポンプなあらすじ。
突然出てくる珍奇な格好をした期待外れのヒーロー
各所での納得行かない判断と理屈。

数多くの主役それぞれに見せ場を用意しつつ、それぞれの設定にも配慮した物語。
そんな無茶を注文をこなすのだからひずみが生まれるのは致し方ないのだろう。
正直なところ、物語としての面白みは皆無なほど薄い。
ただしその分、むりくり設定したシチュエーションでご機嫌に動き回るヒーロー達の活躍は十二分に楽しむことが出来る。

映画には色々なバランスがあって、例えば映像的な魅力は少ないが、脚本と適切な演出で見せる映画がある。
この作品は映像の魅力とシチュエーションを追求し、物語はそれなりでまとめた、そういう映画なのだという事。
極端なアンバランスも魅力であり戦力なのだと思う。

しかし1作目も似たような感想なので、2作目を見た後だとさすがに同様の3作目を見るのは……というのが素直な感想。
でも、定期的に花火が見たくなるように、こういったゴージャスなお祭り映画はごちゃごちゃ言わずに雰囲気に乗って見に行くのが粋な気がする。ドンと打ち上がって、ドドーンと散華して、ああ楽しかった! で良いんだきっと。