★★☆☆☆
~もう少し情念を見たい~
※2008年以前の感想に追記したものです。
全ての画面要素をCGで描いた2007年の。CGアニメ。原作はマニアックな注釈欄外や何より「攻殻機動隊」で有名な漫画家、士郎正宗。
前作CG映画「アップルシード」で確立した、漫画キャラに近いテイストのCGキャラクターをそのままに、モブシーンや話の規模、舞台をパワーアップ。――が、不思議な事に映画のスケール感はダウン。
前作は一つの都市が壊滅して行くさまを描き、今作は全世界の壊滅までスケールを広げているが、残念ながら舞台の拡張が個別の描写密度を薄めてしまっている。また、前作は実際に都市が破壊されて行く中の作戦が描かれていたが、今作は言うなれば世界を破壊する爆弾の解除を目指す物語。切迫感に欠けてしまうのも仕方がない。
物語自体は丁寧に作られており、キャラクターの心情も分かりやすい。画面演出にばかり注力した、話が成り立たない凡百の作品と比べれば遥かに良心的。人物配置が秀逸で、脳以外機械化された男。その男の遺伝子から生み出された生身の男。そしてヒロインの三角関係。女一人に男二人の黄金律。機械化された男とヒロインは男がからだを失う前からの恋人同士。このプロットだけで様々な展開を想像できる。
精神的な記憶と、肉体的な記憶。
精神的な愛と、肉体的な愛。
本来不可分であるはずの肉体と精神を別のパッケージにして選択させようとする。人間存在や自己認識の崩壊にまで連なる深遠な問題定義だろう。
おしむらくはヒロインの葛藤が浅薄な範囲に終わってしまったこと。少し揺らぐが、結局は過ちをおかすことも無く「正解」を選ぶ。もっとエロティックな展開を期待してしまうのは、下劣だろうか。
満たされない性欲に身もだえ崩れ落ちて行くヒロイン。
どろどろになった情念を、このCGアニメーション、このSF世界で見てみたかったと思うのだ。
2020年5月29日金曜日
エクスマキナ
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