★★★☆☆
~最小で最笑のタイムマシン物語~
2005年公開の邦画。タイムマシンを題材にしたSF青春物語。
夏。大学の人気のない運動場で五人の男と一匹の犬が野球っぽい競技に躍起になっている。
それを一眼レフで撮影している女性は、絵にならない被写体の何を撮っているのか。
彼らはまったくSFを研究しない「SF研究会」の面々であり、一緒の部室を共有しているカメラ部員である。
野球の後、銭湯に行って汗を流し、またいつものように部室のクーラーのスイッチを入れる。
何の変哲も無い不毛な夏の日々に、わずかな違和感が積み重なっていく。
そして、タイムマシンが現れた――。
人生の夏休みの、さらに夏休みを過ごすバカな男たちとそれを眺める女たち。
何か普遍的な構成を感じるが、ともかく男たちがバカである。
バカなのだが、きちんと方向性の異なる個性的なバカが、自分の役どころを持って集会している状態なので強烈なお約束とノリでドンドコ会話が繋がっていく。まるで吉本新喜劇。
このノリがダメな人にとってはもう耐えられない映画だろうが、楽しめる人にはバカだなあと笑っていられるし、それなりに人情話がおり混ざってきて最後は何となく丸く収まる。感動的でもある。
タイムマシン物の宿命として、この作品にも「下手すると世界や宇宙がやばい!」という展開はあるが、冒険規模はこれまで見た中で最小規模であり、もちろんそれを狙っての作りである。焦点となるのがなんとクーラーのリモコン。これを軸に100年以上にわたる因縁を解きほぐしていくのだからすごい。
話がややこしくなるのは仕方がないが、なんとか飲みこむことができる。起承転結の「起」にたっぷり時間をかけて準備したからこそだと思うが、それでも全然物語が進まない「起」は長すぎるだろう。タイムマシン物を宣言しているから前準備として許容されるのかな。沈むと分かってるタイタニックのように。
舞台が限られており、これは演劇に向いているかもと思ったが、実際は2001年の舞台を原作として映画化されたものなのでそりゃそうだった。このややこしい話を舞台で説明するのはまた異なる技術、トリックが必要だろう。一度こちらも見てみたいものだ。
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