★★★★☆
~手書きとCGのハイブリッド~
林田球の漫画を原作としたアニメーションシリーズ。一期13話。
原作は完結しているが、例によってアニメはそのどこまで描かれたのかすら分からない中途半端なところで終了。人気漫画の素材としての乱伐のようなこの状況は今ではもう当たり前だが、自分にはどうにも気持ちが悪い。
終わりを感じさせないのがIPへの希求を高めるのかもしれないが、終わらない物語は欠陥品だろうと思う。
魔法使いとそれ以外の人間が魔法の扉によって隔絶された不思議な世界。
人間の世界(ホール)は魔法使いの実験台にされた異形の人間たちによって混沌の極にあるが、そこに住む人たちはどこか陽気で楽しげである。
記憶を無くして病院で目を覚ましたカイマンは魔法使いによって頭をトカゲに変えられていた。
犯人を見つけて復讐するため、ホールで知り合った中華料理店の武闘派店主ニカイドウとともに魔法使い狩りを開始する――。
林田球の漫画は一種独特の雰囲気を帯びている。
残酷で悲惨で生死をおもちゃのように扱いながら、暗い雰囲気にはならない不思議なコメディ感を継続しているのだ。
不謹慎だが飄々としたキャラクターには愛着が湧き、特有の世界観と合わせて魅力が増大されていく。
こういった雰囲気をこのアニメは上手に表している。
特筆すべきなのが、手書きとCGの良い塩梅の融合。
原作のタッチを表現するために網掛けやペンの走りをそのままテクスチャにしてキャラモデルに貼り付けている。
結果ぱっと見ではCGだと分からない手書き感が出ており、CGアニメ特有の気持ち悪さが非常に薄い。
さらに作画とCGを場面毎に切り替えて使用しているようで、互いの良いとこ取りに成功。高い画面クオリティを最初から最後まできっちりと保っているのが素晴らしい。
演出についても称賛したい。
CGを多用した作品の多くが意味の無いカメラ挙動病にかかる。必然性のなダイナミックな動きを入れなければならないという強迫観念でもあるのか、ただの会話シーンでグルグル動かす事も良くある。カメラで撮るべきもの、その動きを積み重ねて物語を伝えていくことを忘れて、その場その場の短絡的な表現をしてしまっているのだ。
これは演出する側が特に厳に慎まねばならない、「がんばってしまう失敗」であるが、今作では要所のみCGならではの激しいカメラ挙動を用いて、それ以外はオーソドックスに抑えている。全体としてメリハリのきいた印象となり、この観点でもCGらしさが薄まっている。
手書きとCGをうまく融合させるという方向性について、今作は非常に高い到達点を示してくれている。
制作会社である株式会社MAPPAは「この世界の片隅に」なども制作しており、クオリティの高い作品を多く輩出している。
ただ、――主人公カイマンの声が自分が思っていたよりも甲高く神経質だった違和感は最後まで消えなかったし(←勝手な意見)、出来が良いとは言え非常な尻切れトンボだし、かなりグロだし、手放しで多くの人に進められる作品ではない。
放送枠のCMが、「カイマンのカバン」「キャラクターモチーフの時計」など関連グッズばかりなのも不思議だった。どこで回収する目論見の作品なのだろう……。
0 件のコメント:
コメントを投稿