2020年4月14日火曜日

ドラえもん のび太の魔界大冒険

映画ドラえもん のび太の魔界大冒険【映画ドラえもん30周年記念・期間限定生産商品】 [DVD]

  ★★★★
 ~素直に、美夜子さんが好きだ~
 
 大長編ドラえもんの映画シリーズ第5作目。
 魔界大冒険はのちに新魔界大冒険として再映画化されているが、これは無印の方で監督は22作のドラえもん映画を監督した芝山努。彼にとっては「のび太の海底鬼岩城」に続いて2作目となる。
 

 魔法が使えれば良いのに――。
 のび太の楽したい願望は魔法に向いていた。庭掃除、ホームラン、空を飛ぶ。魔法が出来れば何でも出来るのに。
 出来すぎに魔法という学問が科学に駆逐されたことを説明されてもどうしてもあきらめきれない。
 ドラえもんに「もしもボックス」を出してもらって魔法世界を実現するが、思ったのとは大分違い――。

 自分はF全集(漫画)を揃えて喜んでいる藤子・F・不二雄ファンである。
 藤本先生の漫画を原作とする映画は全て見たが、その中でもこの「のび太の魔界大冒険」は映画として最も優れていると思う。
 原作で最も完成されていると思うのは「のび太の宇宙開拓史」だが、映画の出来はあまり良くない。その点、魔界大冒険は原作に忠実でありながら、真っ直ぐに映像的な魅力が加えられている。結果映画ならではの価値がきちんと生まれている。
 
 魔界大冒険はかなりきわどい、複雑な話である。
 
 タイムマシンを使った時間的な錯綜に加え、もしもボックスによるパラレルワールドも絡んでいる。
 これらをきちんと整理、理解しようとするとかなり根深い考察にはまり込んで行くし、おそらく他のドラえもん作品との矛盾も出てきて正解はない。
 このような複雑な話を、表面的な説明と勢いで分かった気にさせてくれる原作がまずすごいのだが、映像にするのはさらに難しいと思う。説明も「聞く」事になるのでさらに分かりやすさと、はったりが必要なのだ。
 
 いくつかのシーンが焼き付いているが、これらが「はったりのきいている」部分なのだろう。
 
 ◆魔法のほうきのオープニング
  たのまれた庭掃除を、ほうきに魔法をかけて出来ないものかと試すアドバンタイトルから、命を吹き込まれたほうきが動き回るオープニング。
  魔法なんてかかっておらず、コテンと倒れるほうきから本編開始。
  この滑らかな繋ぎの気持ちよさ!

 ◆出来杉の魔法解説
  一本の木が描かれたエッチング画の背景がマーブル模様に迫ってくる画面。
  このインパクトがすごい。
  説明的には「世の中に満ちた人知を越えた力」を表しているが、原作もすごいがこう動かす映画もすごい。
  その後のドクロ画像も合わせておどろおどろしし雰囲気が後の悪魔軍団と繋がっている。

 ◆デマオンとの逃亡劇
  終盤の悪魔軍団からドラえもんたちが魔法のカーペットで必死に逃げるシーン。
  魔法でミサイルのように迫ってくる小惑星たちを魔法やショックガンで撃ち返すシーンも良いが、その背景の流れる星の迫力。
  星が散らばったトンネルを高速で移動するような表現になっており、実際で考えてみればそんな風に見えるバズはないのだが、追走劇に緊迫感を与えている。カーブで逃げて、カーブを追いかけてくる辺り最高。

 ◆「千里千年を見通す予知の目よ!」
  宣伝でも多用されていたので覚えている方も多いと思う。美夜子(ゲストヒロイン)とのびドラが雲の上の月光の下でやり取りするシーン。
  掲げた水晶玉に大魔王を倒す勇者たちを映し出すシーン。
  美夜子は他にもペンダントから小さな剣を取り出し、それを等倍に戻して手に取ったりと小道具がらみのカッコイイシーンが多い!
  
 美夜子はのび太たちより年上の(中学校~高校くらい?)快活なショートカットの女性で、初見から好みだ。
 男勝りな部分があるのだが、それをきちんとした礼節で包んであり、潔く格好良い。
 僕の奥さんみたいだ。とこっそりのろけ。
 
 今作をよくよく考えるとこわい部分を以下にメモしておく。
 
・パラレルワールドの元ののび太はどうなっているのか
  つまりは「もしもボックス」の怖さなのだが、あのベルが鳴り響いた瞬間に新しい世界が作られるのだろうか。
  そうなのだとしたら、のび太が魔法世界に移動した以前の、元々魔法世界にいた者たちが持つのび太の記憶はどのような内容なのだろう。
  いたはずののび太の行動は、誰が生み出したのか。また、のび太が元の世界に帰った後、魔法世界にのび太はいなくなるのだろうか。その記憶を引き継ぐのび太が発生するのだろうか。
  これについてはもしもボックスは数あるパラレルワールドから望みに合致するものを探しだし、そこにいる別世界の同一人物(すごい表現)の魂(人格)をすげ替えるものだという検討がある。これはなかなか条件に合致するが、では突き出された元の魂はどこに行き、どういう形で帰ってくるのかという疑問が続く。記憶喪失のような形がもっともうまく行くかもしれない。

・悪魔とは言え一つの惑星を丸ごと破壊している
  悪魔も、人魚も、鯨も、その他すべての魔界の生物をすべて殺しているという事実。
  おそらく意図的にだが描かれていなかった悪魔の町にくらす女性悪魔や子供悪魔、そこに暮らす悪魔家族の幸せをも消滅させた。
  これは地球を生み出す道具「地球セット」の回(恐竜時代まで育てた地球を火の玉にして破壊)にも言える事だが、数兆に及ぶ命を根こそぎ刈り取っている。
  
・タイムマシンを使えば異なる世界の人間の大移動が可能なのか
  作中魔法世界に転移したのび太はタイムマシンでもしもボックスを使う前の世界に帰ってくる。
  つまりタイムマシンでパラレルワールド間の移動が可能なのだ。
  とすると、ドラえもんがタイムマシンで移動している過去や未来も、じつはどこかでずれたパラレルワールドで、そこにいきなりもう一人ののび太やドラえもんがいてもおかしくないという事になる。
  
  やはり、すごくややこしい話だ――。




 

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