2020年4月10日金曜日

怪奇ゾーン グラビティフォールズ


 ★2020年4月時点では日本語吹き替えされたDVDは発売されていないため、ディズニーチャンネルなどで見るしかありません。リンクは北米のBlu-rayで英語です。
  アマゾンでも見られますが、1話ごとでかなり高価な印象……。

 ★★★★★
 ~ワクワクと切なさのオンパレード~

 2012年から2016年にかけて制作、放送された米アニメ。テレビシリーズとして全41話となっている。
 日本では「ディズニーチャンネル」などの有料チャンネルを中心に放送された。
 
 双子の姉弟であるディッパーとメイベルは12才の夏休みを大叔父スタンの元で過ごすこととなった。
 都会暮らしの二人にとってスタンの住む町グラビティフォールズは片田舎であり、最初は気乗りしなかったが、持ち前の前向きさと好奇心で町の人々と絆を結んで行く。
 グラビティフォールズは数多くの奇妙な現象、伝承を抱えており、二人はその謎と対峙。
 やがてその現象は世界さえ巻き込む規模となっていく――。

 帰省時に実家のケーブルテレビで視聴し、続きが見たくて帰宅後ディズニーチャンネルに入ったほどおもしろい。

 一夏を田舎(彼らにとっての異世界)で過ごし、得がたい経験を経てどこか大人になる物語であり、大人が見るとどこかノスタルジックな雰囲気を感じる事ができる。子供にしか出来ないバカをやったこととか、友達と交わしたちょっとした言葉、だらしないけれど大人であろうとする年上の人々。あこがれの女性……。細かなキラキラした物が物語のそこかしこにちりばめられてある。
 子供が見てもおもしろいようで4才の息子が非常に気に入って一緒に見ていた。
 オバケ、人魚、未来人、怪物――。およそSFにあり得るさまざまな要素がこれでもかと詰め込まれており、確かに子供の好きな物ばかりだ。おどろおどろしい表現は怖がって見ない息子だが、これは絵柄がカートゥーン。パワーパフガールズみたいな表現なのでこわ過ぎないのが良いのだろう。
 上に「子供にしか出来ないバカなこと」と書いたが、実際に子供である彼にとっては今やりたいことをどんどんやって見せてくれる主人公が楽しいのだろう。難しい回しや隠喩を理解できなくとも充分に楽しむことが出来るのだ。
 
 この作品を見るまでは海外のアニメシリーズに触れる機会がほとんどなく、ポパイやトムジェリのクラシックなものや忍者タートルズくらいしか見たことがなかった。イメージとしては手間(動画枚数)はかかっているが、大袈裟にドタバタするわびさびのない子供向けというもので、どこか格下に見ていた。パワーパフガールズは抽象化されたデザインとかわいらしさが大好きだが、スタイリッシュアンパンマンくらいの認識。
 
 そんなこと全然なかった。
 
 今作をきっかけにディズニーチャンネルで放送されている作品を色々見てみたが、ミッキーマウスを初めとするいわゆるディズニーアニメ、映画以外にも多くの作品があり、子供が見てもおもしろい大人向け作品が数多く存在していた。
 「フィニアスとファーブ」「スターバタフライ」など気に入った作品も多々。
 
 いくつかの作品で共通して言える(僕の気に入った作品の)特徴は以下のような感じ。
 海外ドラマでも踏襲されている特徴なのかもしれない。
 
 ・始め可笑しくてやがてシリアス
  シリーズの初めの方はギャグ要素が強く、ドタバタ喜劇の感が強い。
  気軽に見る事のできる敷居の低さ。
  終盤からはそれまで出てきた複線を回収しながらどんどんシリアスになっていき、目が離せなくなる。

 ・一話で綺麗にまとまる脚本の巧みさ
  一つのエピソードが基本的にその中で綺麗に収まる作り。
  膨らみすぎたような話でも急転直下の落ちに持ち込んだり、非常にうまい。
  もちろんまとまりきれない回もあるが許容範囲内。
  シリーズ全体としては進展があったり無かったりだが、複線となるようなパーツは確実に何かしら放り込んである。
 
 ・歌が良い!
  ディズニーならではなのかもしれないが、鼻歌だったりミュージカルだったりさまざまな形で歌が差し込まれてくる。
  当然日本語歌詞になっているのだが、歌詞も歌唱も非常にレベルが高い。
  声優がそのまま歌うのが基本なのだが、みんなうまい。ディズニーお抱えの声優陣は歌えることが大前提になっていると思う。
  例えば他の海外アニメ「スポンジボブ」も同じように歌が差し込まれることが多いが、決してうまいとは言えない、というかおそらく下手。

 正直言って、判で押したような内容ばかりの日本アニメに危機感を感じる。
 最近Netflixがきちんとした対価を払って日本のアニメスタジオに自社向けアニメーションを制作しており、変わっていこうとする流れを感じる。これらは高いクオリティで安定しているが、突出した勢いのない情念を感じられない作品が多い。
 旧来の低い予算のテレビアニメは人員が足りないせいだろうが良くも悪くも制作陣の個性が突出する場合があり、クオリティは安定しないが非常に出来の良い回などが散見される。
 二つの真ん中ぐらいで作品を生み出していかなければ、日本のアニメは他国に駆逐されてしまうかもしれない。

 作品以外の話ばかりになってしまったが「グラビティフォールズ」は万人にお勧めできる傑作である。
 全41話とワンクール物になれた身には長いと感じられるかもしれないが、各話マンネリとは無縁の個性的なエピソードとなっており、下手な作品を三つ(13×3⇒39)見るなら本作を見た方が絶対良い。

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