2016年9月27日火曜日

クオリディア・コード


☆☆☆☆
~嫌われない駄作~


2016年7月から放送されたワンクール(12話)のテレビアニメ。
突如世界侵略を開始した『アンノウン』。人類は子供達を守るためにコールドスリープへ。
目覚めた子供達は各々特殊な能力『世界』を発現させており、いまだ続くアンノウンとの戦闘にかり出されていく。
最前線には学生だけで構成された(「世界」を持っているため)防衛拠点があり、アンノウンとの戦闘結果をランキング化して互いに競い合っている。

アニメ以前に小説が刊行されており、アンノウンの侵攻やアニメーション以前の学生達のやり取りが描かれている模様。アニメはその後の話であり、重複は無い。
物語としてはアニメーション単体だけでも十分と感じる。伏線の回収など含めると、むしろアニメだけで良いのではないか。

冒頭から、いわゆる主人公格のキャラクターが複数登場。これは小説それぞれの主人公達がここに集結した最終章がアニメだからである。
結果、アニメから見た者(自分も)には、こてこてで胸焼けのする程の強烈な中二濃度。痛いキャラクターのオンパレードだが、それだけでは終わらないだろう大仕掛けを予感させる「部品」が点在。余分なエピソードもなく、サクサクと進む物語に興味を引かれて、スルスル視聴してしまう。
開始時こそキャラクターが多すぎて面食らうが、意外に適切な分量で各人のエピソードが描かれており、またむやみにキャラが増えていくこともない。物語としては過不足ない分量をきれいに12話に整えた構成の妙を感じる。

物語の大仕掛けについては題名や、OPの印象から推測が十分に可能であるが、答え合わせと共に、そのような設定をいかにまとめていくのだろうという興味が勝つ。
その期待については、ガバガバの設定、ご都合主義というのも恥ずかしい展開に裏切られるが、不思議と腹が立ったりすることはない。

アニメの出来自体がとんでもなく低いクオリティなので、お話しについてもこんなもんだろう、いや、むしろ良くまとまった方じゃないかと思い違いさせてくれるのだ。
物語は出来事の組み合わせで構成されているとして、それを描く映像がどれだけのクオリティまで到達したのかは以下のような線引きが可能だろう。

<レベル外>
・何が描かれているのか分からない
どういう出来事が起きているのか分からない。
<レベル1>
・何が起こっているのかが分かる
どういう出来事が起こっているのかが分かる。
<レベル2>
・映像が安定している
絵柄、動きが整っており、鑑賞するのに気にならない。
・構図がとれている
構図が整っており、出来事が分かりやすく描かれている。
<レベル3>
・映像が魅力的
絵柄、動きが魅力的。
・構図がすぐれている
構図が緩急効いており、魅力的。
<レベル4>
・映像が物語と相乗効果を生んでいる
魅力的な映像が、言葉では表現できない情報を描き出し、物語を奥行きあるものとしている。
・構図が物語と相乗効果を生んでいる
構図が物語の意味を強調、補佐し、情感を加えている。

今作は「レベル外」と「レベル1」の境目である。

映像が安定しておらず、クオリティの低いいわゆる「作画崩壊」が頻発。動きについても不自然な動画が多発しており、気がそがれる瞬間が多い。
また、アクションシーンにおいては無茶なカット割りが多く、どういう状況を描いているのか、非常に理解しがたい。
ただ、アニメ定番の動きからは外れていない(オリジナリティがない)のでアニメに慣れている者には何とか理解可能のレベルである。

氾濫するアニメを網羅しているわけでは無論ないが、自分の認識する及第点を大幅に下回っており、昨今まれに見るひどさといって良い。
このような「映像」であるから、例えば戦艦が半分に割れてそこから巨大な砲塔が出現したり、何の裏付けもなくくっちゃべるだけのお子様司令官が人間軍を率いていたり、よく分からない能力がその時の都合で機能を変えていたりしても、突っ込むのも野暮と感じられてしまう。音声についても酷いもので、声優の演技以前に音量レベルがおかしい。近くのキャラクターは大きな声、遠くのキャラクターは小さな声としている、その差異が大きすぎて遠くのキャラクターの声が(聞かせるべき内容なのに)聞こえないのだ。まるで素人レベルで驚いてしまう。
つまり、物語においても映像においても音声についても、すべて低いクオリティでまとまり、安定しているため、作品全体としては破綻が無いのだ。
その中で、きちんと整えられた「物語構成」(けして物語ではなく、その構成のみ)だけが、描くべき内容を抱きしめるように保持しているため「クオリティは低いけど、話は分かる」形に着地成功している。視聴したことに腹が立ったり、投じた時間の不毛に脱力感に襲われたりしない「何となく許せる作品」になっているのだ

かといって見るべき作品であるはずが無く、以上の文面を読んで検証してみたくなった人だけが見れば良いと思う、嫌われない駄作だ。

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