2020年12月11日金曜日

スターシップ・トゥルーパーズ レッドプラネット

スターシップ・トゥルーパーズ レッドプラネット 通常版 [Blu-ray]
☆☆☆☆
~過疎感がすごい~


 2017年の日米合作CG映画。日本公開は2018年。
 バグと呼ばれる宇宙怪物(怪虫?)と遭遇した人類が、宇宙船に兵士を詰め込んで戦争を行う物語。
 

 民主主義崩壊後の新政府、地球連邦では軍部を中心とした「ユートピア社会」[2]が築かれている。社会は清廉で、人種・男女の差別なくまったく平等に活躍しているが、軍歴の有無のみにより峻別され、兵役を経た「市民」は市民権を有し、兵役に就かない「一般人」(劇場版日本語字幕では庶民」)にはそれが無い。銀河全体に殖民を開始する人類だが、その先で遭遇した先住の昆虫型宇宙生物(アラクニド・バグズ)の領域を侵したことから紛争が発生し、バグズが地球に対し小惑星を突入させる奇襲攻撃を仕掛け、全面戦争が始まる。<WIKIPEDIA『スターシップ・トゥルーパーズ』より>

 
 ポール・バーホーベン監督による映画一作目「スターシップ・トゥルーパーズ」は、高校時代の親友達がそれぞれの道で宇宙怪物バグとの戦いに挑んでいく姿を描き、監督本人が込めようとした軍国主義やプロパガンダに対する皮肉はあまり意識されない形で人気を博した。実写映画は三作続き、その後テレビシリーズにも展開されたようだが、今作はそれらの設定を引き継いだ、CGアニメ映画としての2作目となる。映画としては5作目。

 時折実写なのか分からないような映像もあり、画面単体でのクオリティはそれなりに感心させられるがそれまで。アニメでもCGでも実写でも、それは手段に過ぎず何が描かれ、どのような感銘を視聴者が受けるのかと言うことが本願なのだ。そう考えると今作はかなり寂しい内容だと言わざるを得ない。

 多用されているフレームぶれが非常に目につく。ショットの種類に関わらず、常に微妙にカメラを動かすことで、人が見ているような、人がカメラを持っているような雰囲気を出す手法で画面の情報量を増やして間が持ちやすくなるのも利点。だが、見ている人に気づかれない程度、空気感を出す程度にするべきなのに今作のそれは動かしすぎて安っぽい。

 宇宙戦艦、新兵訓練、艦隊攻撃、惑星殲滅、降下作戦、わずかな味方、惑星の運命を賭けた最後の戦い……。
 まだまだ沢山の要素がこんちくしょうとやけくそ気味にぶち込まれているが、数だけそろって全て小規模。残念ながら、全ての接頭語として「しょぼい」をつけるとしっくりくる状況。CGで数を増やしやすいバグの群体ばかりワラワラと出てくるが、兵士も火星市民も地球の司令部も、人間は最小限しか出てこない。人間のモブが居ないのでスカスカ。ソーシャルディスタンスかよ! と突っ込みたくなるほど過疎な雰囲気(映画はコロナより前なので関係ない)。

 ただ一つ、映画1作目のある意味失敗した点について、今作は達成しているかもしれない。1作目の内容があまりに面白かったため省みられることの少ない要素となってしまったのだが、「実は映画の全てが戦意昂揚のための映像作品でした」というのが本家のオチだ。軍国主義と喧伝放送による一見民意のように見える世界支配という主軸で、最後が徴兵宣伝で終わるという明らかなオチなのに、驚くくらい軽視されている。
 翻って今作は全編に渡って全て嘘くさく、また、戦闘シーンも大して興味を惹かれないという半端な出来なので、もし「これは戦意昂揚のためのプロパガンダ映像です」と言われらものすごい説得力だったろう。残念ながら1作目と違いそのような言及はないのだが、あればなるほど納得。自傷的なアプローチはファンの心に残ったかもしれないが、駄作のレッテルはさらに強固なものとして燦然と輝いていただろう。まさか狙ってそういうテイストにしたんでは――ないと思うが。


映画3作目『スターシップ・トルーパーズ3』の自分の感想記事はこちら。
スターシップ・トゥルーパーズ3 [Blu-ray]

☆☆☆☆
~神を風刺~ 

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