★★★☆☆
~見るなら家庭でDVD~
アメリカ、ボストンを舞台に繰り広げられる、警察と犯罪組織の水面下の戦い。
犯罪組織に潜り込んだおとり捜査官。刑事となった犯罪組織の(ボスを父親のように仰いでいる)青年。
お互いがお互いの致命傷になり得る、心臓に刃を突けあった二人の物語。
演出は冷徹で人情で引っ張るような湿っぽさがない。
替わりに立ち上るのは、利己と打算が支配する世界の、残酷に乾いた空気。
最初から最後まで緊迫した雰囲気が続くため、見終わった後多少の疲れを感じるだろう。それはまさに、敵地に飛び込んだ二人の気持ちに他ならない。だからこそ、見終わった後の弛緩も、二人の主役と同等に感じられるはずだ。
つくりとしては、オーソドックスで安定的。古くさいという人もいるだろう。
だからといって間延びしているということではなく、むしろ時間内に数年にわたる変遷を詰め込んだ、密度の高い映画である。
話も入り組んでおり、敵味方の錯綜が激しいため、どこかで話を追えなくなってしまうと、残り上映時間を苦痛に過ごすことになるかもしれない。このような場合、DVDやBlu-rayでの視聴はありがたい。
カットつなぎもソリッド、というか、結構容赦なく場面が展開するため、分かりづらい部分が多数。集中してみることが前提になっていることも、古い映画と感じさせるかもしれない。
物語は面白いし、絵になる場面もそこここにちりばめられている。何より主演の三人、レオナルド・ディカプリオ、マット・デイモン、ジャック・ニコルソンの演技が魅力的。特にディカプリオはアイドル俳優と間違えられがちなタイタニックの功罪を跳ね返す、真に迫った演技を見せてくれる。ジャック・ニコルソンもあんなザンバラ禿がなぜあんなに格好良く見えるのか不思議なほどだ。
このように素晴らしい作品なのに、どこかしっくり来ない。
考えてみるに、時間経過がはっきりせず、どのくらいの時間をかけて描かれた物語かが分からないのが一つの原因ではないか。
神経を張り詰めて過ごした時間というものが、どの程度か分からないため、二人の疲弊の強度が伝わりにくいのだ。
また、とってつけたようなご都合主義的な展開が多く、画面の迫真さとかけ離れてしまっているのも痛い。もう少し時間があれば、本筋を補強する細部を描けただろうに、と感じる。
スケール感が思ったより感じられない不満もある。悪役がどの程度の規模なのか、あまり描かれていないため、片田舎のしけた悪党の話と言われても、納得してしまいそうになる。舞台が数カ所に集約されているため感じる閉塞感か。
またこれは直接この映画の責任でも何でもないのだが、Blu-rayの高解像度で鑑賞すると、テレビのドラマのように感じられる事がある。
これまで映画と言えば、テレビ放送にしても、映画館で見るにしても、さまざまなノイズが載った状態での視聴だった。気にしていてもいなくても、それが映画らしさであったのだ。
反対にテレビドラマは趣のない綺麗なだけの画面という印象がある。
したがって、映画の中で気の抜けた画面(これはどのような映画にも緩急として必要だ)や、テレビドラマでも多用されているような構成の画面が出てくると、余りにクリアな印象が、一瞬テレビドラマのように感じられてしまうのである。
このような印象も慣れるまでのことだと思うが、DVDではそのように感じることがなかった訳だから、やはりBlu-rayの高精細表示はこれまでとは異なる次元のものだという証明にはなるだろう。
ともかく、頭脳戦では決してないが、面白い状況設定が生み出す緊迫した物語を楽しむことのできる作品だ。
ところでマーティン・スコセッシ監督はアメリカン・ニューシネマを代表とする一作「タクシードライバー」の監督でもある。
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