~驚異のバランス~
★★★★☆
オリバーストーン監督。
ベトナム戦争に理想と正義感から参加した新米兵が、死線を越えて戦場を去るまでの物語。
大学を中退してまで参加した裕福な家庭の青年が、一兵卒として参加せざるを得ない貧困層の仲間とベトナムの熱帯雨林で戦いながら、残酷な現実を見据えていく。
英雄的な活躍をするといった内容ではなく、力のない新兵がとことん地獄な戦場を目撃し、その狂気に飲み込まれていくといった内容。
戦う二つの勢力の正当性などに一切触れず、ただ設定され展開される状況の中で戦う兵隊の姿は非常にリアル。
作戦や援護、連携もあるのだろうが、結局は混乱の中で各個が獣のように引き金を引く。
他国の人からすれば、「えげつないなあ」で済むが、これを自国の映画としてアカデミー賞まで与える米国は、一体どのような国なのだろう。反戦行動の一環なのだろうか。
ただ、映画としては決して戦争を非難するだけの内容ではない。
このような状況の中で戦った同胞が居るのだと伝えるのみ。
そこには賞賛も、軽蔑もない。
してみるとこのようなバランス感覚の中で、面白く、美しく、ドラマチックな作品を作り上げたことはすさまじいと思うし、ああ確かに受賞の価値がある。
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