2015年11月25日水曜日

残響のテロル

★★★☆☆
~ぼくらは爆破珍走団~

監督は「カウボーイビバップ」の渡辺信一郎。音楽も菅野よう子でカウボーイビバップ再び、の趣。
11話からなるオリジナルアニメーション。

17歳の少年二人が自分や仲間達の復讐、存在証明のために大規模なテロを巻き起こす。
超人的知能で実行される都庁爆破、警察署爆破――しかし死者は出さない。日本中は二人に釘付けになっていく。
その渦中、同年齢の少女が二人組と行動を共にするようになり……。

デリケートな題材である「爆破テロ」「プルトニウム強奪」をど真ん中に据えて物語を展開。
映像クオリティは非常に高く、劇場アニメといっても十分――というか凌駕している。
特に物語の象徴でもある爆発エフェクト(手書きと思われる)は「オネアミスの翼」を彷彿とさせるクオリティ、密度。

音楽演出について、自分はやりすぎ、先鋭すぎと感じた。もう少しキャッチーで良いのではないか。
OP、EDは印象的だが変則的な展開で落ち着かない。
BGMもやたらピコピコ音が耳について、アニメ版「寄生獣」を思い起こさせる。
寄生獣と違ってギリギリのラインで踏ん張っている感じではあるが……。これで売る気はないのだろう。

サブタイトルのセンス、語りすぎない台詞など、脚本演出も平均を上回っており、きっちりと11話で完結。
ただ手間暇かけて描かれているのに、物語の印象としては薄味
最も根本的な物語の意味づけ、「なぜ二人はテロを行うのか」がどうも納得できない。軽い。
わりと個人的な目的のために大多数の無関係な者に迷惑をかけている、という構図になっており珍走団のエンジン音と同様なのだ。
少女の存在もふわふわとして蛇足に感じる。筋書きとしてだけで無く、構成として邪魔になっている印象。

思うに各人の掘り下げが足りないのではないか。
少年達の生い立ち、世界を破壊したいと思いつつ、人を傷つけたくないという矛盾した心境にいたった契機は無いのだろうか。
仲間を大切にする気持ちを描くエピソードが必要ではなかったか。
少年達が少女を受け容れるには、同じ境遇、感情を持つ仲間なのだと納得するシーケンスが足りないのでは無いか。

根っこのところが不安定なため、その上に積み上げた世界が以下にもか弱く貧相に感じられてしまうのだ。

最後の爆発そ。それが引き起こす特殊な状況は、人と人とのつながりを象徴的に見せるこの上ない舞台設定だったと思う。
これをただの副次的効果にしてしまったのがとてももったいないと感じた。

2015年11月24日火曜日

カールじいさんの空飛ぶ家

カールじいさんの空飛ぶ家 ブルーレイ+DVDセット [Blu-ray]

★★☆☆☆
~思ってたよりも~

幼いカールが夢見た南アメリカの秘境にある天空から降り注ぐ滝――パラダイスフォール。
同じ場所への冒険心を持つ少年と少女が出会い、結ばれ、あっという間に時は過ぎ……おじいさんになったカール。
残酷な時の流れに翻弄されながらも再び冒険心を取り戻したカールは我が家に無数の風船を結びつけて空へ飛び立つ!

手慣れた語り口で一気に物語の土台を固めていく、さすがは傑作名作当たり前! のピクサー。抜群の安定感
最低限のセリフで長い時間の流れを情感込めて描く序盤のすばらしさ。
ところがそれ以降はまあいつものディズニー冒険アニメだね、というお定まりの展開。
冒頭とそれ以降の差異が大きすぎて取り残される。
最後に小技を効かせてほろりとさせるものの、どうにもとっ散らかったままの印象で幕を閉じる。

思うに、文化の差異がノスタルジイの効果、人物への好感度を減衰させているのではないか。
作品の中でちりばめられたカールの思い出を飾るディテールが、日本人の自分には通用しない。
カールじいさんをはじめとした登場人物全般に好感度が足りない。結果のめり込めない。
序盤の雰囲気のまま(エリーのいるまま)の物語を見てみたかった。

CMで受けた期待が大きすぎたのか、それ越えることなく物語が終わってしまった残念感。
これは「ウォーリー」でも感じた事で、ピクサー映画は題材の決定と雰囲気の盛り上げがとても上手なのだと思う。
もしくは単純に、CMが上手い、ということか。

一週間フレンズ。

一週間フレンズ。 vol.1 Blu-ray【初回生産限定版】

★★★☆☆
~フェアリーテイル~

漫画原作のワンクールアニメ
原作完結よりも先にアニメは終了したが、尻切れトンボな形ではなく原作と同じまとめ方がなされた模様。きちんと終わっていて気持ち良い。

原作未完状態のアニメ化は昨今非常に多く、オリジナル展開にしてきちんとまとめるか、バッツリと断ち切って終わるかの二者択一。
もちろん程度には差があるが。

二期への期待をつないだり制作の安全性で考えると「断ち切り」の方が有力になっても仕方がない。
オリジナルの展開でまとめる労力は甚大であろうし、そのあげくファンに批判を浴びる可能性も高い。
ただやはり、原作ありのアニメが一つの作品としてきちんと残っていくことを目指すなら挑戦すべき困難であるだろうと思う。
今作はこの点絶妙のタイミングで切り抜けた形。ほぼ同時進行形でクライマックスというのは最も良い形の一つだろう。

物語はかなり強引な設定で違和感は無視したまま進行する。毛色は全く違うが突然理不尽な世界に叩き込まれて説明もなく戦いに巻き込まれる「デスゲーム」物に近い。
なぜか一週間ごとに友達の記憶だけがリセットされてしまう女子高生。人間関係の構築が不可能となった彼女はクラスの誰とも関わらずに過ごしていた。そんな彼女に惹かれた主人公は友達になって欲しいと声をかける……。

状況設定がおもしろく、そこから二人の関係が少しずつ動いていく様子も緊張感をもって見守ることが出来る。
なぜなら一つ間違えばすぐに関係は忘却され、リセットされるのだから。
積み上げてきたはずの人間関係が、ふとしたことから崩れ去って他人になる。特に恋愛関係において多くの人が実感したことのある悲劇ではないだろうか。今作の一週間でリセットの仕組みは、常に関係のはかなさ、断絶を予感させる装置として有効に働いている。

反対に考えると、設定も人物の反応も現実離れしている。それなのに感情としてはリアル。まともに取り合うとつっこみどころの多さに疲れてしまうかもしれない。意識して一歩引いた方が楽しみやすいだろう。
してみるとこの物語はおとぎ話として視聴したほうがしっくり来るかもしれない。

その一助となってくれるのが画面の現実離れした美しさ。特に放課後のやりとりが多いためか夕日のシーンが多い。実はそんなに多くはないのかもしれないが、印象が強い。
赤く染まる画面と射し込む光の美しい処理。中でも海のシーンは波の表現と相まって非常に美しく、幻想的な優しい空気で作品を包み込んでいる。
背景の美しさが世界観を強く打ち立てるという構成は新海誠監督の諸作品と通じるかもしれない。雰囲気で持って行ってしまうのである。

今作はキャラクター描画のクオリティも高く、作画、演技ともに申し分ないが、驚くほどステレオタイプである。純真無垢で素直すぎる反応を見せる主人公とヒロイン。視聴者としてはこれも反発せず、おとぎ話だからとふっくら受け止めた方が世界の幸せが増えるだろう。

まじめに作られた、誠意ある作品だと思う。

バタフライ・エフェクト

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★★★★
~繰り返す一途~

幼い頃から突然記憶が途切れる障害を追った青年が、その謎と仕組みを解き明かす物語。
過去を繰り返して望む結末を追い求める「ループもの」の典型だがアイデアと説得力に富んでおり、オリジナリティを強く感じる。

繰り返しが始まる前にきちんと本筋の人生を描き、そこから改変を行うという段取り。
このおかげで時系列がバタバタするややこしい話なのに理解しやすい。

主要人物を絞り、彼らの人生改変を描くことで繰り返しの影響、その功罪を一目瞭然に浮かび上がらせる。
繰り返しの基点となる場所時点を限定していることも、混乱せずに物語を楽しむことの手助けになっている。
歴史を書き換えようとする物語なのに、パラドックスが起こらない設定となっていることも興味深い。

繰り返せるのに、何度も失敗を繰り返す切なさ。迫るタイムリミット。くじけない一途。
設定に踊らされるのはなく、描きたい内容のために設定を完備している作品。万人に勧められる一本。

DVD特典として上映版とは異なるエンディングを複数収録しているバージョンがある。
特に監督自身が本来のエンディングとした物は、当然だが作中の伏線(手相について)が最も回収された形に収束しており気が晴れる。
その上で正式決定されたエンディングが最も良い形だと納得することも出来るので必見。

あるスキャンダルの覚え書き

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★★☆☆☆
~もはやホラー~

貧困地域のハイスクールに勤めるオールドミス。
若い女性教師が生徒と不倫している事を知った彼女は、良き理解者の立ち位置で彼女に近づいていく。実際にあった事件を題材にしているとのことだが、いったいどこまでが実際なのか不明。

孤独な初老婦人は人とのふれあいを求めていたのか。優位な立場で善人を演じる自分に酔いたかったのか。美しい女教師に同性愛的な欲情を感じていたのか。若い姿を自分と置き換えて体験していたのか。

オールドミスの目的がはっきりせず、恐ろしい。社会派というよりもホラーのようだと感じた。渾然となった色分けされない感情の渦が見える。
ラストシーンも、恐ろしいといえばなんとも恐ろしく感じられる。

タイム

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★★☆☆☆
~物語が遠い~

遺伝情報至上主義社会の静かな反乱を描いた「ガタカ」。
人工のデジタル女優に振り回される映画監督の物語、「シモーヌ」。
魅力的な作品を出し続けるアンドリュー・ニコル監督の作品なので期待大きく視聴したが、肩すかしな印象となった。

全ての人間の腕には、死に至るまでの「残り時間」が表示され、労働することによってそれを延長する世界。金銭が時間に置き換えられ、バスに乗るのにもコーヒーを飲むのにも自分の残り時間を消費する。莫大な時間を持つ富裕層は隔離された都市で自由に暮らし、貧困層はその日を生きる労働に終始する。
現実でも、人間は人生の持ち時間を労働によって金銭に変えて生活している。自分の持ち時間を金銭と同一にするという設定により、実際に存在しているが意識に上りにくい人生の時間、つまりは命を可視化するという大仕掛け。

おもしろいのは個人の時間は互いに委譲可能ということ。お金でもあるのだから当然だがこれがドラマを生み、同時に世界観の構築を難しくしてしまっている。
貧困層に属する主人公は工場でその日生きる時間稼ぎに精一杯。ある日突然時間の大富豪となった主人公は、富裕層の住む都市を訪れ、この世の仕組みと理不尽を目の当たりにし、一人の女性と出会う。
設定にときめくし実際そつなく描かれていく物語は最後まで予断を許さない。残念なのはこれが現実感をもったSFではなく、おとぎ話に感じられることだ。
大仕掛けな分、つじつまの合わない所が随所に溢れ、それが目に付く。整った画面で淡々と描かれているため、勢いでごまかされることなく違和感が降り積もっていくのだ。どのような雰囲気かというと、「シモーヌ」を見た人ならば、その劇中で上映された映画を2時間枠にした物というのがどんぴしゃり。耽美で象徴的。悪くいえば障子越しに見た景色のようなあやふやさ。

大仕掛けな設定と表現手法が食い違っている印象。同じような要素を持つ「ガタカ」は設定の不確かさが浮かび上がることなく視聴できた。舞台を広げすぎずこぢんまりと納めていたことが有利に働いたのだと思う。
どこまで話を広げるのかを見極めるのは実に難しい事なのだろう。